精選版 日本国語大辞典 「拉」の意味・読み・例文・類語
ひしぎ【拉】
〘名〙 (動詞「ひしぐ(拉)」の連用形の名詞化)
① ひしぐこと。ひしいでいること。
※浄瑠璃・日本振袖始(1718)四「一ひしぎに取って伏せ」
② 能で、ヒィーと鋭く鳴る、能管の最高音域の音。次第・一声など登場の囃子の冒頭や一曲の最終部分に用いる「双(もろ)ひしぎ」と、早笛・狂言次第などの囃子の冒頭や終結に用いる「片ひしぎ」とがある。
③ 長唄の囃子で、能管の演奏について②と同じものをいう。
④ 一音高く、「ヒー」と鳴る音を、②③にたとえていう。
※俳諧・毛吹草(1638)五「先鳴は鶯笛のひしぎ哉〈宗明〉」
ひし・ぐ【拉】
[1] 〘他ガ五(四)〙
① おしつけてつぶす。おしつけて砕く。おしつぶす。ひしゃぐ。
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「頭と頭と打合させ、ひしゐで抛捨て」
② 勢いをくじく。面目をつぶす。
※狂歌・徳和歌後万載集(1785)一「うつくしきかほやが沼の杜若あやめの花をひしぎこそすれ」
③ 笛を軽く吹き鳴らす。
※日葡辞書(1603‐04)「フエヲ fixigu(ヒシグ)」
[2] 〘自他ガ下二〙 ⇒ひしげる(拉)
ひし・げる【拉】
[1] 〘自ガ下一〙 ひし・ぐ 〘自ガ下二〙 おされてつぶれる。おし砕かれる。ひしゃげる。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「冠(かうぶり)の破れひしげて、巾子(こじ)のかぎりある」
[2] 〘他ガ下一〙 ひし・ぐ 〘他ガ下二〙 =ひしぐ(拉)(一)
※浄瑠璃・蝉丸(1693頃)一「兄が鼻までひしぐるが夫を寝取られ口をしうは思はぬか」
ひしゃ・げる【拉】
〘自ガ下一〙 ひしゃ・ぐ 〘自ガ下二〙
① おしつぶされて平たくなる。ぺしゃんこになる。
※俳諧・七車集(1694か)「二間の鑓の余る小座鋪〈神叔〉 ひしゃけたる鞠に篠打暮の月〈介我〉」
② 意欲や気力がなくなる。うちひしぐ。
※辰三の場合(1959)〈吉田健一〉「それを思うまでよりももっとひしゃげた気持になって」
ひさ・ぐ【拉】
[1] 〘他ガ四〙 押しつぶす。砕く。ひしぐ。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
[2] 〘自ガ下二〙 押されてつぶれる。ひしがれる。ひしゃげる。
※撰集抄(1250頃)七「家のひさげける時、此本尊のとうじんの観音、宗順の上におほひて」
ひしゃ・ぐ【拉】
[1] 〘他ガ五(四)〙 平たくおしつぶす。ぺしゃんこにする。ひさぐ。
※咄本・一休関東咄(1672)上「あつもりまわせんずばしばいをふみやぶらん、つかみひしゃがん」
[2] 〘自ガ下二〙 ⇒ひしゃげる(拉)
へしゃ・げる【拉】
〘自ガ下一〙 押さえつけられてつぶれる。押しつぶされる。ひしゃげる。
※浄瑠璃・彦山権現誓助剣(1786)九「へしゃげたはいの、こちらまでも鼻がへしゃげたはいの」
らっ‐・する【拉】
〘他サ変〙 らっ・す 〘他サ変〙 むりに連れて行く。拉致する。
※江戸繁昌記(1832‐36)五「御殿山桜〈略〉一擲千金拉レ妓遊、三杯好耐レ洗二春愁一」
しゃ・げる【拉】
〘自ガ下一〙 押しつぶされる。つぶれる。へしゃげる。
※洒落本・三千之紙屑(1801)初「げへに群集だア、ヲレおしくさるなへ、しゃけるわい」
らっ‐・す【拉】
〘他サ変〙 ⇒らっする(拉)
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