抜歯を受けるときの注意(読み)ばっしをうけるときのちゅうい

家庭医学館 「抜歯を受けるときの注意」の解説

ばっしをうけるときのちゅうい【抜歯を受けるときの注意】

抜歯を受ける前の注意
 抜歯は、からだの一部を傷つけることですから、心身ともに良好な状態のときに受けてください。睡眠不足や疲れ、熱がある、のどが痛い、生理中といった場合は避けるべきです。1日の仕事が終わった夕方から夜にかけての抜歯は、非常に危険です。
 また、心臓病、高血圧糖尿病、肝臓病、腎臓病(じんぞうびょう)などの基礎疾患があり、抗凝固薬(こうぎょうこやく)、降圧薬、ステロイドなどを投与されていたり、腎臓病で人工透析(じんこうとうせき)を受けている人などは、事前に歯科医師に申し出てください。
 患者さんが希望しても、初診時には抜歯しないのが原則です。初診時は、患者さんには不安感があり、歯科医師のほうは患者さんの背景を十分理解する時間がないことなどがその理由です。抜歯には麻酔が必要です。現在、歯科で広く使われている麻酔薬塩酸リドカインは、薬物アレルギーをおこしにくい、安全性の高い薬剤です。しかし、まれに薬物アレルギーがおこることもあるので、過去に過敏症状をおこした経験のある人は、事前に歯科医師にその旨を申し出てください。
●抜歯中の注意
 麻酔や抜歯に対する恐怖心と不安感から、気分が悪くなることがあります。血圧の変動、呼吸回数の変動、胸が重くなったり痛くなったりといった症状が現われます。最初は気持ちの問題からおこりますが、これが進むと、からだのほうに変化がおこってきます。したがって、自分で落ち着く努力をすると同時に、歯科医師の指示をよく聞いてください。
 前記のような症状が現われた場合、ほとんどが「貧血をおこした」と表現されますが、この場合は脳貧血様症状(のうひんけつようしょうじょう)のことで、精神的なものが原因の血圧低下による末梢循環不全(まっしょうじゅんかんふぜん)です。こうした症状は、頭を低くして頭部への血液循環をよくすることや、酸素吸入で回復しますが、精神安定剤の服用も有効です。
 これと逆な場合として、過換気症候群(かかんきしょうこうぐん)(「過換気症候群」)がおこることがあります。若い女性に多くみられるもので、このようなときは、酸素吸入はせず、ビニール袋などを顔にかぶせ、自分のはいた息をそのまま吸わせると、炭酸ガス濃度が上がり、回復します。
●抜歯後の注意
 抜歯した当日は、過激な運動や風呂(ふろ)、飲酒は避けます。通常の食事はしてかまいません。
 ふつうなら、抜歯した後の穴(抜歯窩(ばっしか))には固まった血(血餅(けっぺい))がつまっており、その上に白っぽい膜状(まくじょう)のものがついています。
 強いうがいや、指や舌先などでこの部分を触ると、血餅や膜がとれてしまい、出血したり骨が露出してドライソケット(乾燥抜歯窩)になり、疼痛(とうつう)がおこったりします。またこうしたことは、抜歯後感染につながります。
●埋伏歯(まいふくし)抜歯の場合の特別な注意
 智歯(ちし)(親しらず)などの埋伏歯(歯槽骨(しそうこつ)の中に埋まっている歯)の抜歯は、かなりたいへんな手術で、ふつうの抜歯とは別の手術と考えたほうがよいでしょう。粘膜(ねんまく)を切開し、骨を露出させて穴を開け、中にある埋伏歯を、取り出せるようにいくつかに分割します。
 個人差はありますが、当然、手術時間も長くかかり、手術後の痛みや腫(は)れも避けられません。しかし麻酔は十分に効きますし、術式も確立されていますので、比較的安全に手術を受けられます(智歯周囲炎(ちししゅういえん)(「智歯周囲炎」))。
 以上のように、一口に抜歯といっても、自然脱落寸前の乳歯の抜歯から、埋伏智歯の抜歯まで、いろいろなケースがあることを知っておいてください。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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