抗コリン剤（副交感神経抑制剤）（読み）コウコリンザイフクコウカンシンケイヨクセイザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版

抗コリン剤（副交感神経抑制剤）

製品名
　　《ジサイクロミン塩酸塩・水酸化アルミニウム配合剤》
コランチル（共和薬品工業）
レスポリックス（鶴原製薬）
《ピペリドレート塩酸塩製剤》
《チメピジウム臭化物水和物製剤》
セスデン（田辺三菱製薬、ニプロESファーマ）
ゼスン（辰巳化学）
チメピジウム臭化物（沢井製薬）
《ブチルスコポラミン臭化物製剤》
ブスコパン（サノフィ）
ブチルスコポラミン臭化物（日本ジェネリック、鶴原製薬、日医工、日新製薬）
《ブトロピウム臭化物製剤》
コリオパン（エーザイ）
《プロパンテリン臭化物配合剤》
プロ・バンサイン（ファイザー）
メサフィリン（エーザイ、サンノーバ）
《N‐メチルスコポラミンメチル硫酸塩製剤》
ダイピン（第一三共）

　胃液（胃酸やペプシンなどの攻撃因子）の分泌をコントロールしているのは自律神経のひとつである副交感神経です。副交感神経のはたらきが活発になれば胃液の分泌も盛んになり、はたらきが弱くなれば胃液の分泌も抑えられます。この副交感神経からの刺激が胃粘膜に伝達されるときに重要な役割を果たしている物質（刺激伝導物質）がコリン（アセチルコリン）です。抗コリン剤はコリンのはたらきを抑制する作用があるので、服用すれば副交感神経のはたらきも抑えられ、胃液の分泌も抑えられます。こうしたことから、消化性潰瘍（胃・十二指腸潰瘍）の治療剤として使用されています。ただ、H₂受容体拮抗剤きっこうざいや防御因子増強剤のような新しい薬の登場以来、あまり用いられなくなりました。

　また、副交感神経は、消化器（食道・胃・腸・胆嚢たんのう・胆管など）、尿路、膀胱ぼうこう、子宮などの運動も支配していて、副交感神経のはたらきが活発になると、これらの臓器の運動も盛んになります。しかし運動が過度になるとけいれんや痛みをおこします。抗コリン剤は、こうしたけいれんや痛みを鎮める作用もあります。このため、けいれんを鎮める・痛みを抑える薬（鎮痙剤ちんけいざい）としても使われます。

　抗コリン剤は、食道けいれん、幽門ゆうもんけいれん、胃炎、腸炎、腸疝痛ちょうせんつう、けいれん性便秘、機能性下痢、胆嚢炎、胆管炎、胆石症、胆道ジスキネジア、尿路結石、膵炎、膀胱けいれん、月経困難症などのけいれんや痛みの治療剤として用いられています。

　このほか、パーキンソン病の治療剤としても使用されています。

①過敏症状（発疹ほっしんなどのアレルギー症状）をおこすことがあります。過敏症状がおこったら服用を中止し、すぐ医師に相談してください。

②ジサイクロミン塩酸塩・水酸化アルミニウム配合剤ではアルミニウム脳症、アルミニウム骨症、貧血が、ブチルスコポラミン臭化物製剤ではショック、アナフィラキシーがおこることがあります。こうした症状がおこったときは、使用を中止してすぐ医師に報告してください。また薬によっては、のどが渇いたり、目がかすむ、おなかが張る、便秘、尿が出にくい、頭痛、動悸どうきといった症状をおこすことがあります。

①いろいろな剤型があり、食後の服用（坐剤ざざいについてはじょうずな使用法を参照）が原則ですが、1日あるいは1回の服用量、服用時間については医師・薬剤師の指示を守り、かってに中止したり、減量・増量しないでください。

　また、服用するときは、十分な水（コップ1杯の水）で飲んでください。

②長期間服用しないと効果の現れない薬ですから、服用は継続してください。

③1日の服用のうち、夕食後はとくに効果があるので、忘れずに服用してください。

④過去にこれらの薬で過敏症状をおこしたことのある人、緑内障の人、前立腺肥大症ぜんりつせんひだいしょうで排尿障害のある人、重症の心臓病の人、麻痺性まひせいイレウスの人、さらにジサイクロミン塩酸塩・水酸化アルミニウム配合剤では透析療法を受けている人、ブチルスコポラミン臭化物製剤では出血性大腸炎の人にも使用できません。このような人は、あらかじめその旨を医師に報告してください。

⑤前立腺肥大症、うっ血性心不全、不整脈、甲状腺機能亢進症こうじょうせんきのうこうしんしょう、潰瘍性大腸炎といった病気のある人、また高温の環境下で働いている人には服用量を減量するといった配慮が必要となるので、あらかじめ医師に報告してください。妊婦、現在妊娠する可能性のある人なども、あらかじめ医師に報告してください。

⑥薬によっては、三環系抗うつ剤、フェノチアジン系抗精神病剤、抗炎症剤の抗ヒスタミン剤、MAO阻害剤と併用すると、抗コリン剤の作用が増強されることがあります。ほかの病気の治療のために、こうした薬を服用している人は、あらかじめ医師に報告してください。

⑦アルコール飲料と併用すると、抗コリン剤の効果が過剰に現れるので、服用中は禁酒を守ってください。

⑧目がかすむ、ねむけ、めまいといった副作用をおこすことがあるので、自動車運転や危険を伴う作業は避けてください。ジサイクロミン塩酸塩・水酸化アルミニウム配合剤では、このような職業にたずさわる人は医師に相談してください。

出典　病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版