[1] 〘自サ変〙 とう・ず 〘自サ変〙
① つけいる。つけこむ。乗ずる。
※地蔵菩薩霊験記(16C後)四「物に応じ機(き)に逗(トウ)ずるの上には」
※内地雑居未来之夢(1886)〈
坪内逍遙〉一二「洋装流行の嗜好に投
(タウ)ずる最も廉
(やすね)にして美な品であれば」
② (自分の身をある場所に置く意から) 宿泊する。やどる。とまる。投宿する。また、乗り物に乗る。
※豩菴集(1420)山水図・有鷺「波声撼二動沙辺樹一、欲レ宿今無二枝可一レ投」
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一「去って隣村の旅舎に投(トウ)ず」
③ 降参する。投降する。
④ あう。一致する。投合する。
※うもれ木(1892)〈樋口一葉〉五「意気投(タウ)じ処論合って」
[2] 〘他サ変〙 とう・ず 〘他サ変〙
① なげる。なげ入れる。
(イ) 物をなげ出す。ほうる。
※史記抄(1477)一二「大石を三百歩ばかり投ずるぞ」
(ロ) (自分の身をある環境になげ入れる意から) 進んで身をゆだねる。また、身を置く。
※正法眼蔵(1231‐53)礼拝得髄「一向に仏法に身心を投ぜんことを、ふかくたくはふるこころとせるは」
※受胎(1947)〈
井上友一郎〉「いはゆる芸界に投じて以来の辛酸についても語った」
② 入れる。おしこめる。
※久保清太郎・久坂玄瑞宛吉田松陰書簡‐安政六年(1859)八月一三日「此段上に不レ届候処、後脇より露顕せし故投レ獄」
③ 贈る。与える。また、投与する。
※三教指帰(797頃)中「卿之投レ薬、前視二千金之裘一、猶レ対二龍虎一」
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一「余、金を投(トウ)じて之れに謝せん」
④ ふるう。はらう。
⑤ (金などを)つぎこむ。
※文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一「銭を投じて買ふ可し」
⑥ 募集に応じて作品を送ったり、選挙で投票したりする。
※あきらめ(1911)〈
田村俊子〉二「富枝は脚本を書いて見た。〈略〉ある
新聞で懸賞の脚本を募った時に試しにそれを投じておいた」