扶桑(読み)ふそう

精選版 日本国語大辞典 「扶桑」の意味・読み・例文・類語

ふ‐そう ‥サウ【扶桑】

[1] 〘名〙
① 昔、中国で太陽の出る東海の中にあるといわれた、葉が桑の木に似た神木。また、その地の称。扶揺扶桑木
延喜式(927)祝詞「東は扶桑に至り、西は虞淵(ぐえん)に至り」
神皇正統記(1339‐43)上「東海の中に扶桑の木あり、日の出所なり」 〔楚辞離騒
② 太陽。
※本朝文粋(1060頃)一・菟裘賦〈兼明親王〉「扶桑豈無影乎、浮雲掩而乍昏」
③ 植物「ぶっそうげ(仏桑花)」の漢名。《季・夏》 〔薬品手引草(1778)〕
[2] 中国から見て太陽の出る東の方にある国。すなわち、日本国の異称扶桑国
田氏家集(892頃)中・夏夜於鴻臚館餞北客帰郷「行李礼成廻節信、扶桑恩極出蓬壺
※天草本平家(1592)読誦の人に対して書す「バウバウタル コカイニ フナワタリ シテ〈略〉 Fusǒni(フサウニ) アトヲ トドメ」 〔王維‐送秘書晁監還日本国詩序〕

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デジタル大辞泉 「扶桑」の意味・読み・例文・類語

ふ‐そう〔‐サウ〕【扶桑】

古代、中国で日の出る東海の中にあるとされた神木。また、それのある土地。転じて、日本の異称。
松島は―第一の好風にして」〈奥の細道
ブッソウゲ別名
[類語](1日本大和やまと日の本八洲国やしまくに大八洲おおやしま秋津島敷島葦原あしはらの中つ国豊葦原とよあしはら瑞穂みずほの国和国わこく日東東海神州本邦本朝ジャパンジパング

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改訂新版 世界大百科事典 「扶桑」の意味・わかりやすい解説

扶桑[町] (ふそう)

愛知県北西端,丹羽郡の町。人口3万3558(2010)。東は犬山市,北は木曾川を隔てて岐阜県に接し,木曾川が形成した犬山扇状地に位置する。畑が多く,かつて養蚕が盛んに行われたが,現在は守口ダイコンとその裏作のゴボウが栽培され,またトマト,キュウリなどのハウス栽培や養豚,養鶏,酪農なども行われる。カーテンを主とするインテリア織物を産するが,近年は繊維工業から精密機械,自動車部品製造など機械工業の比重が高くなっている。中央部を名鉄犬山線が,東部を国道41号線が通るなど交通の便に恵まれ,名古屋市のベッドタウン化が進んでいる。
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扶桑 (ふそう)
Fú sāng

搏桑とも書く。中国神話にみえる太陽の昇る木。《山海経(せんがいきよう)》海外東経に,〈湯谷の上に扶桑あり,十日の浴する所〉〈大木あり。九日下枝に居り,一日上枝に居る〉とあって,十日が順次この木から天路に上るとするが,馬王堆第1号漢墓(馬王堆漢墓)出土の帛画(はくが)にみえる。太陽の降る木を若木といい桑樹。桑は神木とされ,禹(う)には台桑,伊尹(いいん)にも空桑の説話がある。扶桑は東海の海上にあるとされ,のち日本の異名となった。
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普及版 字通 「扶桑」の読み・字形・画数・意味

【扶桑】ふそう(さう)

東海中、日の出る所にある神木。日はその枝から空に上る。日本の別称。〔梁書、諸夷、扶桑国伝〕扶桑は大國の東二餘里に在り。~其の土、扶桑の木多し。故に以て名と爲す。

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デジタル大辞泉プラス 「扶桑」の解説

扶桑

日本海軍の戦艦。扶桑型戦艦の1番艦。1914年進水、1915年就役の超弩級戦艦。ミッドウェー海戦などに参加。1944年、スリガオ海峡海戦にて被弾、沈没。

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世界大百科事典(旧版)内の扶桑の言及

【東】より

…さらに《続日本紀》慶雲1年(704)7月の条にみえる,この月に帰朝した遣唐使の粟田朝臣真人に関する旅行体験談には,〈海東〉とか〈大倭国〉とか〈君子国〉とかの語がちりばめられている。 平安時代に入ってから用いられた〈扶桑(ふそう)〉とか〈夫木(ふぼく)〉とかの日本国の別称も,もともと,中国古代神話において,東海のかなた太陽の出る所にあると信じられた大きな神木をさし,またその地をさしていた。中世から近世にかけて,日本の知識人は自国の異称に〈東海〉〈東洋〉〈東瀛(とうえい)〉〈東鯷(とうてい)〉などの語をそのまま用いたが,これらの異称は,いずれも東シナ海の東方に存在する島国という意味である。…

※「扶桑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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