打寄(読み)うちよせる

精選版 日本国語大辞典 「打寄」の意味・読み・例文・類語

うち‐よ・せる【打寄】

[1] 〘自サ下一〙 うちよ・す 〘自サ下二〙
① 波が岸に寄せる。
古今(905‐914)秋上・一七〇「河風のすずしくもあるかうちよする浪とともにや秋はたつらん〈紀貫之〉」
② (「うち」は接頭語) 押し寄せる。攻め寄せる。
今昔(1120頃か)二三「蛇(じゃ)の、尾を水より指(さ)し上(あげ)て、恒世が立てる方様に拍(うち)寄せける」
③ (「うち」は馬をむちで打つ意) 馬に乗って近づく。
※大鏡(12C前)五「入道殿は、御むまをおしかへして、帥殿の御うなじのもとにいとちかううちよせさせ給て」
[2] 〘他サ下一〙 うちよ・す 〘他サ下二〙 (波が物を)岸の方に運ぶ。
平家(13C前)一二「十郎蔵人行家、緒方三郎維義が船共、浦々島々に打よせられて」

うち‐よ・る【打寄】

〘自ラ五(四)〙 (「うち」は接頭語)
① あるもののそばに行く。また、「うち」は「馬をむちでうつ」意で、馬に乗って近づくことをいうかと考えられる場合もある。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「うつほある杉の木のもとにうちよりて、馬よりおりて」
※大鏡(12C前)二「『何事にか』とて、うちより給へるに」
② ある場所に寄り集まる。また、①と同じく、馬に乗って集まることをいうと考えられる場合もある。
太平記(14C後)三一「谷々に戦ける兵共十方へ落散ける間、一所に打寄る事不叶して」
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三「皆打よって詮議いたせば」
途中でちょっと立ち寄る。
曾我物語(南北朝頃)七「ついでにうちよりて、御目にかかるべし、さいごのいとまをも申さん」

うち‐よせ【打寄】

〘名〙
① 寄り合って話すこと。寄り合い。
洒落本・深川手習草紙(1785)序「大鉢を中に三人五徳の形(なり)に居並んで、彼打寄(ヨセ)の真最中所を我が立聞して」
俳諧・通し馬(1680)「蒔石に氷の流れたたえたり〈友雪〉 勝に極まる浜の打よせ〈梅朝〉」
※歌舞伎・蝶々孖梅菊(1828)大詰本舞台、常足の二重、蹴込み打寄せの砂地」

うち‐えする【打寄】

(「うちよする」の上代東国方言) 「駿河(するが)」にかかる。
※万葉(8C後)二〇・四三四五「吾妹子(わぎめこ)と二人わが見し宇知江須流(ウチエスル)駿河の嶺(ね)らは恋(くふ)しくめあるか」

うち‐よする【打寄】

波の打ち寄せる駿河国の意で、「駿河」にかかる。うちえする。
※万葉(8C後)三・三一九「なまよみの 甲斐の国 打縁流(うちよすル) 駿河の国と」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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