手板(読み)ていた

精選版 日本国語大辞典 「手板」の意味・読み・例文・類語

て‐いた【手板】

〘名〙
[一] (「手」は手びかえの意)
① 文字などを記し、不用となれば拭き消すことのできる、漆塗りの小さな板。塗板(ぬりいた)
束帯着用の時右手に持つ薄い板。笏(しゃく)のこと。
壒嚢鈔(1445‐46)五「真には笏(しゃく)也。只手板也」
③ (もと板に書いたところから) 大工の設計図、露店商人の場所割りを書いた図面、劇場で客席の入場者数を調べるために印刷した図面などをいう。
[二] (「手」は手形の意。もと小形の木板に記したところから)
① 江戸時代に金銀および書状・荷物郵送に用いた紙製証券。郵送品目・発行者・受領者・飛脚商の氏名を記入し、発行者および飛脚商の調印したもの。送り届けると受領者の領収印を付した左券(さけん)を持ち帰り、後日の証とした。
※俳諧・当世男(1676)付句「手板のかねによその夕暮 かまぼこの杉の昔は初瀬山〈幽山〉」
廻船に所持させ、送り荷主から荷受問屋または荷受人宛に送る積荷目録で、廻船名・船籍積荷品名数量・荷主・荷受人などの明細を記したもの。
※船法御定並諸方聞書(1724頃)「万一手板付き不申候荷物御座候時分、破損荷打、乗り捨之船御座候はは手板に書付不申分は、皆々其船頭のまどひに御座候」

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デジタル大辞泉 「手板」の意味・読み・例文・類語

て‐いた【手板】

漆を塗った小さな板。文字を書いたり消したりすることができるもの。ぬりいた。
しゃく異称
建築の塗装見本にする板。
榑木くれき断面を測るための長方形の板。
江戸時代、金品逓送に用いた証券。逓送品目・発行者・受領者・飛脚商の氏名などを記入し、送り届けると受領印をもらって持ち帰ったもの。
江戸時代、廻船による運送の際、荷主・品名・数量・送り先などを記して廻船に所持させた積み荷目録。

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普及版 字通 「手板」の読み・字形・画数・意味

【手板】しゆばん

笏(しゃく)。位階ある者が束帯のときに持ち、手書するのに用いた。〔宋書、礼志五〕笏(こつ)なるは、事るときは則ち之れに書す。故に常に筆(しんぴつ)す。今の白筆は、是れ其の象なり。~手板は則ち古の笏なり。

字通「手」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の手板の言及

【笏】より

…日本ではコツの音が骨に通ずるところからこれを嫌い,またその長さが1尺であったことから〈しゃく〉と称するようになったことが《倭名類聚抄》に記されている。元来は手板(しゆばん)とも呼ばれて,君命や奏上事項を板の上に書いて忽忘(こつぼう)に備えた備忘用の板であり,威儀の料となっても笏紙(しやくし)といって儀式の覚書を記した紙を笏の内側にはることが行われた。養老令の制度では,唐制と同じに五位以上は牙(げ)の笏と規定しているが,牙は容易に得がたいので,《延喜式》の弾正台式に白木をもって牙にかえることが許されており,礼服のほかはすべて木製となって近世にいたった。…

※「手板」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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