精選版 日本国語大辞典 「手控」の意味・読み・例文・類語
て‐びかえ ‥びかへ【手控】
〘名〙
① 心おぼえに手許に控えておくこと。おぼえがき。また、それを書く手帳。
※殿村篠斎宛馬琴書簡‐天保八年(1837)八月一一日「先頃古板二通りと手前手びかへにしるし有之候間」
② ひかえめにすること。ひかえめな態度。
※東京日日新聞‐明治二九年(1896)一一月一三日「大銀行と称する向は何れも手控え見送りの姿にて」
[補注]①については、「随・松の落葉(1829)四」に「袖書 袖は衣のかたへによりてつきたるものなれば、わすれぬためにもののかたへにいささかかきつくるを、むかしは袖書といひき。今の世にはそれを袖びかへといひ、又そをはぶきててびかへともいひて、いかなることともしられぬやうになれり」とあり、これに従えば、別語源の語となる。
て‐びか・える ‥びかへる【手控】
〘他ア下一(ハ下一)〙 てびか・ふ 〘他ハ下二〙
① 予備その他のために手許に取っておく。また、心おぼえに手許に書きとめておく。
② 物事をするのをさしひかえる。ひかえめにする。
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生と赤い月「どこの本屋も皆出版を手控へてゐるんだから」
③ 取引市場で、買手が進んで買わず、また、売手が進んで売り込まずに見送る。
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