手形交換(読み)てがたこうかん

精選版 日本国語大辞典 「手形交換」の意味・読み・例文・類語

てがた‐こうかん ‥カウクヮン【手形交換】

〘名〙 同一地域内の一群銀行が、互いに他の銀行から取り立てるべき手形小切手手形交換所に持ち寄って呈示交換し、差引勘定によって決済し合うこと。
社会百面相(1902)〈内田魯庵〉青年実業家「銀行の取引実務とか手形交換の実習とか云ふものなら」

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改訂新版 世界大百科事典 「手形交換」の意味・わかりやすい解説

手形交換 (てがたこうかん)

金融機関相互における手形小切手の集団的決済の契約ないし行為をいう。その方法は,経済圏を同一にする一定地域内に営業店をもつ金融機関が,支払銀行ごとに手形,小切手を取り立てる手数を省略し,一定の場所(手形交換所)で互いに手形,小切手を同時に請求しあい,その差額だけを決済するというものである。差額(交換じり)の決済は,おもに日本銀行本支店の当座勘定で行われる。為替を通じて行われる隔地決済に対し,同地決済とも呼ばれる。手形交換は,その範囲,やり方によって,他行交換・行内交換,直接交換・代理交換,本交換・夜間交換等に区分できる。他行交換とは通常の手形交換を指す。他行払いの手形,小切手を支払銀行別に分類集計し,手形交換所へ持ち出し,相手銀行へ配付し,同時に相手銀行からも同様にして持ち出された手形,小切手を受け取るものである。行内交換とは自行内の手形交換をいう。交換持出しされた手形,小切手のうち自店以外の本支店を支払場所とするものを,その地域の幹事役をする営業店(交換母店)において,手形交換所と同様の方法で交換し,営業店ごとの差額は為替勘定により交換母店との間で決済する。また,直接自行の名で手形交換を行う場合を直接交換,手形交換所参加銀行に手形交換を委託している金融機関のために行う場合を代理交換という。さらに,休日を除いて毎日午前中に行われるのが本交換,交換枚数の多い金融機関の間で交換日の前日の夜行われるのが夜間交換である。

 手形交換手続は,金融機関の窓口において手形,小切手を受け入れる段階から,手形交換されるまで広い分野にわたるため,手形交換所規則等の統一的な取決めのもとに行われている。手形交換される手形,小切手の枚数,金額の変動は経済活動の変化をそのまま反映するので,景気の動向をみる手がかりとして利用されている。全国銀行協会連合会(全銀協)が〈全国手形交換高・不渡手形実数・取引停止処分数調〉で発表している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「手形交換」の意味・わかりやすい解説

手形交換
てがたこうかん

多数の金融機関が相互に取立てる手形,小切手など (総称して交換手形と呼ぶ) を持寄って交換し,その差額 (交換尻) を授受して取立て,支払いをすませる (交換決済) 制度をいう。差額の授受は特定の銀行 (決済銀行) にある各金融機関の預金の振替によって行われ,現金の授受はしないので簡易迅速,安全なうえ,多額の支払準備金を大幅に節減できるという効果をもっている。この手形交換を行う場所,施設が手形交換所である。手形交換に参加する金融機関は加盟銀行と代理交換委託金融機関の別があり,前者は手形交換所に直接出席して自行の名で手形交換を行い (直接交換) ,後者は加盟銀行に交換事務を委託するものである (代理交換) 。このようにして手形交換から持帰った手形,小切手は振出人 (引受人) の当座預金からその金額が引落されるわけであるが,資金不足,取引なし,あるいは盗難,紛失などの申し出があった場合は,それらの手形,小切手は支払いができず,持出銀行に不渡返還 (交換日の翌営業日の手形交換に組入れて返還することを逆交換という) することになる。このような手形,小切手を一般に不渡手形と呼んでいる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「手形交換」の意味・わかりやすい解説

手形交換
てがたこうかん
clearing

同一地域内の金融機関が、他の金融機関を支払場所とする手形・小切手などの証券類を一定の時間に一定の場所(手形交換所)に持ち寄って、互いに呈示し、相互の貸借を相殺して決済する仕組み。持帰り手形と持出し手形の差額(交換尻(じり))は、各金融機関が日本銀行に有する当座勘定の間で振替え処理される。手形交換の手続は、手形交換所規則などの統一的な取決めのもとに行われている。なお、手形交換される手形・小切手の枚数、金額は全国銀行協会(全銀協)によってまとめられて発表されており、景気の動向をみる指標の一つとして利用されている。

[太田和男]

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