手宮洞窟(読み)てみやどうくつ

日本歴史地名大系 「手宮洞窟」の解説

手宮洞窟
てみやどうくつ

[現在地名]小樽市手宮一丁目

小樽市街地の北に位置する海食洞窟。洞窟内に続縄文時代後半の岩壁彫刻(陰刻画)をもつ。国指定史跡。現在は小樽市手宮洞窟保存館に覆われ、陰刻面はガラスカプセル内に保存されている。洞窟本体は前面に北海道初の鉄道施設(旧手宮駅)が建設されたこともあり、大きく削り取られ、現在は保存館内にわずかに幅四メートル・高さ三メートル・奥行二メートルほどの凹みが残る程度。なお保存館建設に伴う調査で主洞窟南側に小規模な2号洞窟が発見されている。陰刻面の標高は約二メートル。洞窟のある茅柴かやしば岬は凝灰岩の露頭がみられ、いくつかの海食洞窟が存在していた。これらは続縄文文化期初頭に海水の及ばない状態になった。洞窟は一八六六年(慶応二年)に石材試掘を行っていた石工長兵衛により偶然発見された。明治一一年(一八七八)榎本武揚来訪模写によりその存在が広く知られ、揺籃期にあった当時の考古学界の主要人物たちが次々に訪れている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「手宮洞窟」の解説

てみやどうくつ【手宮洞窟】


北海道小樽市手宮の手宮公園付近にある洞窟。約1600年前の続縄文時代中期から後期のものと推定される貴重な壁面彫刻がある。彫刻は、角のある人物、杖のようなものを持った人物や四角い仮面のようなものをつけた人物のほか、角のある四足動物なども描かれている。とくに角のある人物は、北東アジア全域で広く見られたシャーマンを表現したものではないかと見られ、その他の特徴もアムール川周辺に見られる岩壁画と共通点が多く、同じ北海道のフゴッペ洞窟の壁面彫刻とともに、日本海を囲むロシア、中国、朝鮮半島などの間にある大きな文化の流れを表すものと考えられている。壁面彫刻は、1866年(慶応2)、ニシン番屋の建設のために相模国(現在の神奈川県)から来ていた石工の長兵衛が建築用の石を探しているときに偶然発見した。イギリスの地質学者ジョン・ミルン開拓使(当時の北海道全体を統括する機関)、人類学者の渡瀬荘三郎などによって調査され、彫刻のある岩や続縄文時代の土器とともに刃の部分が傷んだ石斧(せきふ)なども出土している。1921年(大正10)には国指定史跡となり、1949年(昭和24)にブロンズによる模刻、保存覆屋(おおいや)の整備が行われた。1986年(昭和61)から保存修復事業が進められ、1995年(平成7)に手宮洞窟の陰刻面を保存する手宮洞窟保存館が完成し、カプセル内に保存された壁面彫刻を実際に目にすることができる。JR函館本線小樽駅から中央バス「総合博物館」下車、徒歩約3分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

百科事典マイペディア 「手宮洞窟」の意味・わかりやすい解説

手宮洞窟【てみやどうくつ】

北海道小樽市手宮公園内にある洞窟遺跡(史跡)で,壁面彫刻がある。文字説,絵画説,偽刻説をめぐって論争が行われたが,1951年フゴッペ洞窟で同様な彫刻が発見され,偽刻説は否定された。洞窟の堆積層から縄文(じょうもん)土器が発見されているが,刻された時期は不明。

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