戸川幸夫(読み)トガワユキオ

デジタル大辞泉 「戸川幸夫」の意味・読み・例文・類語

とがわ‐ゆきお〔とがはゆきを〕【戸川幸夫】

[1912~2004]動物作家。佐賀の生まれ。正確な知識に基づいて動物の生態を描き、動物文学という新しいジャンルを文壇に打ち立てた。子供向けの作品も多い。「高安犬物語」で直木賞受賞。他に「オーロラの下で」など。動物愛護活動でも知られ、昭和40年(1965)にはイリオモテヤマネコ発見にも関与した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「戸川幸夫」の意味・わかりやすい解説

戸川幸夫
とがわゆきお
(1912―2004)

作家。佐賀県鍋島(なべしま)村(現佐賀市)に生まれる。山形高校理科へ入学したが、健康上の理由で中退。回復後、東京日日新聞社へ入社し、以後1955年(昭和30)までジャーナリスト生活を送った。東京日日新聞社会部長、毎日グラフ編集次長などを歴任。1954年長谷川伸(しん)の主催する新鷹(しんよう)会に参加、同年『大衆文芸』に発表した『高安犬(こうやすいぬ)物語』で直木賞を受賞。1962年に出版された『子どものための動物物語』全15巻で、サンケイ児童出版文化賞を受賞した。動物の生態を正しい知識に基づいて描く物語は、椋鳩十(むくはとじゅう)と並び、児童文学の世界に動物小説という新しい分野を確立した。

 極北の吹雪のなかで生まれ、王座を捨て、人間とともに自然と闘うオオカミ犬の物語『オーロラの下で』(1975)や、マサイの少年と野生ライオンの触れ合いを描いた『王者のとりで』(1984)など、重厚な感動を生み出した作品がある。また、ルポルタージュや、独特の人間観から描かれた将校伝や戦記物語ユーモア小説と幅広い活躍をみせた。また、イリオモテヤマネコの発見にかかわった人物としても有名であり、その経緯を『イリオモテヤマネコ』(1972)に著した。

 1977年『戸川幸夫動物文学全集』全15巻で芸術選奨文部大臣賞、80年紫綬褒章、86年勲三等瑞宝章を受章した。

[二上洋一]

『『子どものための動物物語』全15巻(1969・国土社)』『『イリオモテヤマネコ――原始の西表島で発見された“生きた化石動物”の謎』(1972・自由国民社)』『『戸川幸夫動物文学全集』全15巻(1976・講談社)』『『オーロラの下で』(金の星文庫)』『『高安犬物語』(新潮文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「戸川幸夫」の意味・わかりやすい解説

戸川幸夫
とがわゆきお

[生]1912.4.15. 佐賀
[没]2004.5.1. 東京
作家。日本の動物文学の草分け。幼い頃から動物に興味をもち,動物学者を志して山形高校理科に入学したが,健康上の理由から中退。 1937年に東京日日新聞に入社し,1955年まで記者生活を送る。 1954年,知人の小説家長谷川伸の勧めで書いた小説『高安犬物語』で直木賞を受賞し,作家生活に入る。その後も野生動物の生態や,動物と人間のかかわりなどを描いた作品を多く発表し,動物文学の第一人者となる。子供向けの読み物も多く手がけ,1962年『子どものための動物物語』 (全 15巻) でサンケイ児童出版賞を受賞。 1965年には絶滅したと思われていたイリオモテヤマネコを発見し,その経緯を『イリオモテヤマネコ』 (1972) に著した。ほかにも,時代小説やユーモア小説,ルポルタージュ,ノンフィクション,伝記,戦記物語など幅広く執筆。おもな著作に『咬ませ犬』 (1956) ,『山の動物たち』 (1956) ,『オーロラの下で』 (1975) ,『牙王物語』 (1976) ,『けものみち』 (1982) ,『人喰鉄道』 (1982) ,『王者のとりで』 (1984) ,『人間提督山本五十六』 (1993) ,『戸川幸夫動物文学全集』 (1976~77) などがある。また,日本動物愛護協会理事や世界野生生物基金委員などを務め,動物の保護・愛護活動にも尽力した。 1980年紫綬褒章,1986年勲三等瑞宝章を受章。 1985年児童文化功労者。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「戸川幸夫」の解説

戸川幸夫 とがわ-ゆきお

1912-2004 昭和後期-平成時代の小説家。
明治45年4月15日生まれ。毎日新聞の記者をつとめ,長谷川伸のすすめで小説をかく。昭和30年「高安犬物語」で直木賞。動物文学という新領域を開拓した。40年イリオモテヤマネコを発見した。52年「戸川幸夫動物文学全集」で芸術選奨。平成16年5月1日死去。92歳。佐賀県出身。山形高中退。作品に「咬ませ犬」「牙王物語」など。

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