日本大百科全書(ニッポニカ) 「戸主(こしゅ)」の意味・わかりやすい解説
戸主(こしゅ)
こしゅ
第二次世界大戦後に民法が改正される以前の日本の家族制度の中心をなした概念で、家の統率者・支配者。一家にはかならず1人の戸主がおり、祖先の祭祀(さいし)財産と家の財産を承継するとともに、家族の婚姻・縁組みなどに許可を与える権限などを有していた。戸主の地位は家督相続によって承継された。第二次大戦後、家の制度の廃止とともに廃止された。
[高橋康之]
令制の戸主
律令(りつりょう)制下の編戸制に伴い採用された戸籍制の用語。「へぬし」とも訓(よ)む。戸の代表者で家長を戸主とした。律令国家は、儒教的家族観による家父長制を中心に人民支配を行った。これまで地方豪族の村落支配に全体として編成された人々は、制度上は戸主を中心とする郷戸(ごうこ)に編成され、郷戸単位に、班田収授制、租庸調(そようちょう)収奪を受けることになった。戸主は、国家に対し、籍帳作成の責任、戸口の納税、賦役の責任をもった。しかし、唐(とう)の尊長制、家長制がどこまで日本律令制に継受されたか問題であり、共同体首長を軸とする日本古代社会の構造のなかで戸主制はなじまなかった側面が指摘されている。
[野田嶺志]
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