戸(建具)(読み)と

日本大百科全書(ニッポニカ) 「戸(建具)」の意味・わかりやすい解説

戸(建具)

門、建物、戸棚あるいは乗り物、仏壇、郵便ポストなどの開口部に、外と中を遮断するためにたてる建具の一種。開閉する仕組みによって回転、平行移動の2種類に大別され、そのうちドアのような開き戸を扉とよぶ。

 まず、回転する仕組みをもつ戸についてみると、回転の軸が水平か垂直かの別があり、さらに軸の位置が戸の端にあるものと端にないものに分けることができる。水平の軸が戸の端にある戸も、さらに、その軸が戸の上にあるか下にあるかによって区別ができる。それぞれの区分ごとに実際の例を当てはめてみれば、水平軸で戸の上の端に軸のあるものには蔀戸(しとみど)・突き上げ戸、下の端にあるものには、別荘などに使われる戸締まりとデッキを兼ねた戸やライティングデスクの戸、中央にあるものには回転窓がある。近年は水平軸の戸をいくつも連続させたジャロジーのようなものもつくられている。垂直軸では、端に軸のある板扉、いわゆる西洋建築のドア、中央に軸があり90度の角度で四枚の戸を組み合わせた回転ドアがある。垂直軸の場合には、戸の吊(つ)り方に軸吊り、肘壺(ひじつぼ)、丁番(ちょうつがい)の別がある。垂直軸の場合、扉の回転半径内はデッドスペースになって物が置けない、回転半径内にいると扉に当たる危険があるなどの欠点がある。回転ドアは、寒気や風が入らないためのくふうである。

 平行移動する戸には、面内平行移動型と面外平行移動型があり、さらに、横に移動するものと上下へ移動するものとに分けることができる。面内で横に移動する機構には、敷居鴨居(かもい)(あるいはレール)を使うものと、上からぶら下がっているものとがある。面内で上下に移動するものには、紐(ひも)で分銅あるいはほかの戸とバランスしているもののほかに、下へ落とすものや、上へあげて留めるものがみられる。実際の例では、鴨居・敷居を使って横へ移動させるものには障子や襖(ふすま)、上で吊っているものには電車の戸があり、上下に移動するものは明治以後の西洋館に使われた上げ下げ窓、下へ落とすものや上へあげて留めるものは電車や客車の窓にみられる。横に面外平行移動する戸は、最近観光バスの出入口にみられるようになっている。

 以上のほかに平行移動と回転が組み合わされた複雑な動きをする戸があり、そのような例として、上にあがりながら水平になっていくガレージの戸、その動きが連続的に続くシャッター、水平軸が少し移動する突き出し窓や内倒し窓、垂直軸で平行移動と回転が組み合わされた間仕切りの戸やアコーディオンドア、水平軸と垂直軸の回転が組み合わされた韓国の住宅や寺院にみられるまずドアのように回転し、さらに上端を軸に蔀のように吊られる障子のような格子に紙を貼(は)った戸、最近の戸棚にみられるドアのように90度開きそのまま横に面内平行移動して戸棚の中に引き込まれる扉、たいへん複雑な動きをする飛行機の扉など、さまざまな機構がくふうされている。

 以上のような一定の動きをする戸のほかに、必要に応じて取り外す戸もある。古い例では、半蔀(はじとみ)の下半分がそのような造りであり、近世には、普段あまり使わない茶室のような建物を保護するために、掛け戸とよばれた板戸が桃山時代ころから使われている。また大広間のような大きな建物では、雨戸とよばれる板戸を軒下に仮設した柱の間にはめ込んだり、引き違いにたてたりしていた。機構の違いのほかに、戸そのものの構造から、板扉(一枚板、板を寄せて裏に桟を打ったもの、桟の両面に板を打ったものなど)、桟唐戸(さんからど)、格子戸、杉戸などの別や、木製・金属製・紙貼りなどの材料の違いもある。

[平井 聖]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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