或る「小倉日記」伝(読み)あるこくらにっきでん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「或る「小倉日記」伝」の意味・わかりやすい解説

或る「小倉日記」伝
あるこくらにっきでん

松本清張短編小説。『三田文学』1952年(昭和27)9月号に掲載。1958年12月、角川書店刊の同名の短編集に収録。無名廃疾の青年田上(たのうえ)耕作が、散逸したと信じられていた森鴎外(おうがい)の『小倉日記』のかわりに、小倉時代の鴎外の行跡を調査していくが、志なかばにして病死する。しかも、その死後2か月を経てから鴎外自筆の『小倉日記』が発見される。清張は才能がありながら運命翻弄(ほんろう)され、不遇のうちに恨みを呑(の)み、敗れさる人間の怨念慟哭(どうこく)を自己の心象と相乗させて描出している。第28回芥川(あくたがわ)賞受賞。

[山崎一穎]

『『或る「小倉日記」伝』(新潮文庫)』

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デジタル大辞泉プラス 「或る「小倉日記」伝」の解説

或る「小倉日記」伝

松本清張の短編小説。1952年発表。同年、第28回芥川賞受賞。森鴎外の日記『小倉日記』の行方を調査する主人公とその母を描く。

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