我楽多文庫(読み)がらくたぶんこ

精選版 日本国語大辞典 「我楽多文庫」の意味・読み・例文・類語

がらくたぶんこ【我楽多文庫】

文芸雑誌硯友社機関誌。明治一八年(一八八五創刊、同二二年一〇月終刊。全四三冊。はじめ筆写回覧雑誌同人小説短歌、詩などをのせた。のち活版非売本、活版公売本を経て同二二年より「文庫」と改題近代文学最初の文芸雑誌であり同人雑誌

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デジタル大辞泉 「我楽多文庫」の意味・読み・例文・類語

がらくたぶんこ【我楽多文庫】

硯友社けんゆうしゃの機関誌。明治18年(1885)創刊。同22年廃刊。同人の小説・短歌・詩などを掲載。近代日本文学最初の文芸雑誌であり同人雑誌でもある。

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百科事典マイペディア 「我楽多文庫」の意味・わかりやすい解説

我楽多文庫【がらくたぶんこ】

明治期の文芸雑誌。硯友(けんゆう)社の機関誌。1885年尾崎紅葉山田美妙らが回覧雑誌として創刊。初めは筆写で,後に印刷本となり公刊発売もされた。通巻43冊。1889年10月廃刊。1889年3月に《文庫》と改題。近代日本最初の純文学雑誌。江戸文芸の名ごりをひき,小説,落語新体詩狂歌となんでも載せた。紅葉美妙処女作もここに発表されている。
→関連項目石橋思案同人雑誌

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改訂新版 世界大百科事典 「我楽多文庫」の意味・わかりやすい解説

我楽多文庫 (がらくたぶんこ)

明治期の文芸雑誌。1885年(明治18)5月創刊,89年10月廃刊。全43冊。尾崎紅葉を中心とする硯友社(けんゆうしや)の同人誌として,筆写回覧雑誌のかたちで出発し,やがて印刷され,公売された。89年3月に《文庫》と改題した。小説系の同人誌としては,日本最初のもので,紅葉,山田美妙(びみよう),巌谷小波さざなみ),川上眉山,広津柳浪ら明治中期の主要作家の初期の文章を収めている。題意は,政治的な文章を除いた趣味としての多様な文章の寄せ集めであり,小説,戯文,漢詩,川柳,狂歌から落語までも載せる同好的,娯楽的な雑誌であったが,合評や古典翻刻も掲載するなど,しだいに文芸意識を高め,近代文学の出発の一つの場を築いた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「我楽多文庫」の意味・わかりやすい解説

我楽多文庫
がらくたぶんこ

文芸同人雑誌。1885年(明治18)5月創刊、89年10月廃刊。尾崎紅葉(こうよう)、山田美妙(びみょう)、石橋思案(しあん)、巌谷小波(いわやさざなみ)、川上眉山(びざん)、江見水蔭(すいいん)、広津柳浪(りゅうろう)ら、硯友社(けんゆうしゃ)の機関誌。初め紅葉、美妙による筆写回覧雑誌で、内容も戯文、狂歌、都々逸(どどいつ)などをも含む遊戯的な色調が濃厚であったが、文学改良の時代風潮に応じ、近代的な写実文学の創造に向かった。同人が増加して86年11月活版の非売本形式に変わり、さらに88年5月から公売となり返り初号を出した。翌年3月の同第17号から『文庫』と改題、吉岡書籍店より発売されたが、第27号で廃刊。美妙の脱退(1888)後は紅葉が中心で、硯友社員を相次いで文壇に登場させたほか、幸田露伴(ろはん)や淡島寒月(あわしまかんげつ)の短編なども掲載した。本誌では美妙の言文一致体、紅葉の雅俗折衷(がぞくせっちゅう)体など、小説文体の模索がとくに注目される。

[岡 保生]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「我楽多文庫」の意味・わかりやすい解説

我楽多文庫
がらくたぶんこ

硯友社の機関誌。 1885年5月,大学予備門の学生であった尾崎紅葉山田美妙ら4人が筆写回覧誌として創刊。9~16号を印刷非売本として刊行,88年5月初めて公刊発売本として1号を発行,翌年2月 16号を出したのち,17号から『文庫』と改題,89年 10月の 27号をもって廃刊した。通巻 43冊に及び日本最初の同人雑誌として歴史的価値を残す。紅葉の処女作『江嶋土産滑稽貝屏風』,美妙の処女作『竪琴草紙』は筆写本時代のこの雑誌に発表された。また,紅葉,美妙のほか,石橋思案,巌谷小波,広津柳浪,川上眉山,泉鏡花,小栗風葉らの作家が,この雑誌から輩出した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「我楽多文庫」の解説

我楽多文庫
がらくたぶんこ

硯友社(けんゆうしゃ)発行の文芸同人誌。筆写回覧本時代,活版非売本時代,活版公刊本時代にわけられる。1885年(明治18)5月,尾崎紅葉・山田美妙(びみょう)・石橋思案・丸岡九華(きゅうか)が硯友社をおこし,筆写回覧したのが始まり。86年11月9号から活版非売本となり,16号まで出された。88年5月活字公刊本1号が発行され,翌年3月17号から「文庫」と改題,同年10月27号をもって終刊。同人にはほかに巌谷小波(いわやさざなみ)・川上眉山(びざん)・江見水蔭(すいいん)・広津柳浪(りゅうろう)らがあり,「文庫」には淡路寒月・幸田露伴も寄稿。筆写回覧本時代には戯作・戯文が多い。公刊本1号に「硯友社々則」をかかげるなど,日本文学発展の先導者としての意識がうかがえる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「我楽多文庫」の解説

我楽多文庫
がらくたぶんこ

明治中期,硯友社の機関誌
1885年,尾崎紅葉・山田美妙らによって始められた。純文学同人誌の先駆となったが,'89年終刊。

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世界大百科事典(旧版)内の我楽多文庫の言及

【硯友社】より

…1885年(明治18)2月,東京大学予備門在学中の尾崎紅葉,山田美妙(びみよう),石橋思案(1867‐1927)らが高等商業生徒の丸岡九華(きゆうか)らをかたらい創立した。同年5月から機関誌《我楽多(がらくた)文庫》を創刊,小説,漢詩,戯文,狂歌,川柳,都々逸(どどいつ)など,さまざまな作品を載せた。はじめ紅葉,美妙が筆写した回覧雑誌だったが,のち印刷し,さらに公売へと,部数も増加した。…

【同人雑誌】より

… 日本の評論雑誌の祖というべき《明六雑誌》(1874創刊)は,明治初年の啓蒙主義的な学者・思想家たちの講演記録集だったから,同人雑誌の源をそこにみることもできる。小説発表の場としての同人雑誌は,尾崎紅葉,山田美妙らの《我楽多(がらくた)文庫》(1885創刊,当初は筆写回覧本)が最初である。文芸,社会思想がたがいに競い合った明治末年ごろから青年グループによる雑誌の刊行がさかんとなり,昭和初年には〈同人雑誌の全盛期〉(高見順)となった。…

※「我楽多文庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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