成虫原基(読み)せいちゅうげんき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「成虫原基」の意味・わかりやすい解説

成虫原基
せいちゅうげんき

昆虫の幼虫内にあり、将来、はね、触角、肢(あし)など成虫の諸器官となる原基をいう。成虫芽(が)ともよぶ。胚(はい)の発生時、その分化を決定された細胞塊は成虫原基として幼虫器官近傍とか、将来あるべき位置の表皮下に畳み込まれている。これら成虫原基は幼虫期の間に成長を続け、幼虫最終齢期になると、アラタ体ホルモンの消失に続いて前胸腺(せん)から分泌されるエクジソンの作用により急激に発達分化する。完全変態の動物では、蛹(さなぎ)になる際に成虫原基は急激に体表に現れる。一方、不完全変態の昆虫では、成虫原基は幼虫器官と同時に成長し、最終脱皮とともに幼虫器官と置き換わる。完全変態類では、成虫原基の分化は強く決定されている。しかし、移植を繰り返し長期間増殖させた成虫原基を、宿主とともに分化させると、本来のものと違ったものに分化すること、すなわち分化の転換をすることが知られている。

[竹内重夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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