(読み)にっくい

精選版 日本国語大辞典 「憎」の意味・読み・例文・類語

にっく・い【憎】

〘形口〙 にっく・し 〘形ク〙 (「にくい」の変化した語。「にくい(憎)」を強めていう)
① きわめてにくい。気にくわない。腹立たしい。
※金刀比羅本平治(1220頃か)中「にっくひやつかな。とをせといはば通せかし」
② 無骨(ぶこつ)である。愛嬌(あいきょう)がない。かわいげがない。
謡曲安宅(1516頃)「我等を始めて皆々憎(にっく)山伏にて候ふが」
③ 感心するくらいである。あっぱれだ。
史記抄(1477)一三「物語のついでに、賁赫はにっくうをとなな者でさうと云たぞ」

にくみん‐・ず【憎】

〘自サ変〙 (「にくみす(憎)」の変化した語) 忌み嫌う。憎らしく思う。
※元和本下学集(1617)「晉阮籍以青眼人以白眼(ニクミンス)人也」

にくし‐・む【憎】

〘他マ四〙 =にくむ(憎)
浮世草子武道伝来記(1687)六「万一、脇に憎(ニク)しむ者あって、我々にめいわくさせん為に申たるにぞ有べし」

にくしみ【憎】

〘名〙 (動詞「にくしむ(憎)」の連用形名詞化) 憎く思うこと。にくみ。にくさ。
※浮世草子・武道伝来記(1687)一「かほどまで、御悪(ニク)しみの深き事」

にく【憎】

(形容詞「にくい」の語幹) 憎らしいこと。いけ好かないこと。多く感動表現に用いる。
蜻蛉(974頃)下「なほあらんよりは、あなにくとも聞き思ふべけれど」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「憎」の意味・読み・例文・類語

ぞう【憎】[漢字項目]

常用漢字] [音]ゾウ(慣) [訓]にくむ にくい にくらしい にくしみ
にくむ。にくしみ。「憎悪ぞうお愛憎
難読生憎あいにく

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【エンペドクレス】より

…彼の哲学を解釈するにあたって,もっとも大きな問題はこの二つの著作の関係である。《自然について》は地水火風の四元素(四大)と,愛と憎という二つの力とを中心にして展開する宇宙論である。愛は四元素を結合する力,憎は分離する力であるが,この二つの力の勢力の消長交代によって宇宙は四つの時期に区分されながら永遠に回帰する。…

※「憎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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