慢性GVHD(慢性移植片対宿主病)

内科学 第10版 の解説

慢性GVHD(慢性移植片対宿主病)(移植後合併症の予防と治療)

(2)慢性GVHD
(chronic GVHD,慢性移植片対宿主病)
 慢性GVHDは同種移植後の長期生存者の生命予後および生活に最も大きな影響を与える移植合併症である.炎症前面に出る急性GVHDと比べ慢性GVHDでは自己免疫疾患様で組織の線維化を特徴とする病態をとる.新たな臨床分類として2005年に米国NIH分類(Filipovich,2005)が提唱され,移植後100日以降に発症する古典的慢性GVHDのほかに,新分類では発症時期の規定はなくなり,急性GVHDと重複する病像をとる「重複型(overlap syndrome)」という分類も新たに規定された.一方,より臓器特異的観点から重症度を規定することにより,慢性GVHDが生命予後に与える影響を示すことができるようになった.重症度は,8臓器のスコア(1~3)から判断され,スコア1が1あるいは2臓器(肺を除く)に認める場合は「軽度(mild)」,1臓器以上でスコア2(肺の場合はスコア1),あるいはスコア1が3臓器以上で認める場合は「中等度(moderate)」,スコア3(肺の場合はスコア2以上)が1臓器でも存在する場合は「重症(severe)」と分類される(表14-8-5,14-8-6).
 慢性GVHDの治療は,「軽度」で症状がある場合はステロイド外用薬などによる局所療法を行う.一方,「中等度」以上,あるいは「軽度」でも血小板減少や高ビリルビン血症を伴う場合や治療中の急性GVHDから進展したものの場合,ステロイド全身投与(プレドニゾロン0.5~1 mg/kg)を中心とした一次治療の開始が必要である.カルシニューリン阻害薬を併用する場合も多い.一次治療開始後2週間以降の増悪,8週間でも改善を認めない,あるいは減量ができない場合に二次治療の開始を検討する.いまだ標準的二次治療は確立されておらず,ステロイドの増量のほかに,体外フォトフェレーシス(ECP),ミコフェノール酸モフェチル(MMF),リツキシマブ,シロリムス,イマチニブ,ペントスタチン,間葉系細胞(MSC)療法などの報告がなされているが,いずれもわが国では保険適応外であり臨床研究の範疇となる.[高橋 聡]
■文献
Atsuta Y, Suzuki R, et al: Disease-specific analyses of unrelated cord blood transplantation compared with unrelated bone marrow transplantation in adult patients with acute leukemia. Blood, 113: 1631-1638, 2009.
Blazar BR, Murphy WJ, et al: Advances in graft-versus-host disease biology and therapy. Nat Rev Immunol, 12(6): 443-458, 2012.
Filipovich AH, Weisdorf D, et al: National Institutes of Health consensus development project on criteria for clinical trials in chronic graft-versus-host disease: I. Diagnosis and staging working group report. Biol Blood Marrow Transplant, 11: 945-956, 2005.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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