態と(読み)わざと

精選版 日本国語大辞典 「態と」の意味・読み・例文・類語

わざ‐と【態と】

〘副〙
① こうしようという、ある意図や意識をもって事を行なうさまを表わす語。現在では、そうしなくてもいいのにしいてするさまにいう場合が多い。わざわざ。意識的に。わざっと。
※後撰(951‐953頃)恋二・六一三・詞書「わざとにはあらで、時々物いひふれ侍ける女の」
平家(13C前)四「其日を最後とやおもはれけん、わざと甲(かぶと)は着給はず」
② 状態がきわだつさま、格別に目立つさまを表わす語。とりわけ。特に。
蜻蛉(974頃)中「心地いとあしうおぼえて、わざといと苦しければ」
更級日記(1059頃)「わざとめでたき草子ども、硯の箱の蓋に入れておこせたり」
③ 正式であるさまを表わす語。本格的に。
落窪(10C後)二「わざとの妻(め)にもあらざなり」
④ 事新しく行なうさまを表わす語。あらためて。
※枕(10C終)八「わざと消息し、よびいづべきことにはあらぬや」
※宇治拾遺(1221頃)九「この度は、おほやけの御使なり。すみやかにのぼり給て、またわざと下り給て、習ひ給へ」
⑤ ほんの形ばかりであるさまを表わす語。ほんのちょっと。少しばかり。わざっと。
※俳諧・野集(1650)五「樽は唯わざとばかりの祝言に よひあかつきにくるしみぞ有」
浮世草子・世間御旗本容気(1754)四「生鯛一折、酒一樽、態(ワザ)と祝ひて軽少ながら進上

わざっ‐と【態と】

〘副〙 (「わざと(態━)」の変化した語)
※雑俳・柳多留‐一四(1779)「百旦那わざっとどらをあいしらい
細君(1889)〈坪内逍遙〉二「どうせ出来ない相談なら、私へ態(ワザ)っと話すには及ばない」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「態と」の意味・読み・例文・類語

わざ‐と【態と】

[副]《名詞「わざ(業)」+格助詞「と」から》
意識して、また、意図的に何かをするさま。ことさら。故意に。わざわざ。「態と負ける」
とりわけ目立つさま。格別に。
「―深き御敵と聞こゆるもなし」〈・葵〉
正式であるさま。本格的に。
「―の御学問はさるものにて」〈桐壺
事新しく行うさま。
「―かう立ち寄り給へること」〈若紫
ほんのちょっと。少しばかり。
「ではござりませうが、―一口」〈伎・上野初花
[類語]故意殊更作意作為意識的意図的計画的作為的未必の故意積極的能動的自発的わざわざ殊の外殊に好んでわざとらしいこと新しいあえてせっかくとりわけ奮って主体的意欲的精力的自主的活動的進取前向き強いてたって乗り気求めて進んで我勝ち我先我も我も喜んで喜ぶしゃかりきしゃにむにどしどしアクティブアグレッシブポジティブ自ら手ずから直直じきじき直接直接的じか身を以てダイレクトえいやっと我劣らじとわざとらしいむにまれぬ及ばずながら献身的強気強引押して努めて曲げて断固断然思い切ってるか反るか思う様思う存分存分思いのまま力一杯精一杯率先果敢惜しみない意気込む本腰本腰を入れる入れ込むひたむき

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