日本大百科全書(ニッポニカ) 「愛宕山(落語)」の意味・わかりやすい解説
愛宕山(落語)
あたごやま
落語。上方噺(かみがたばなし)であるが、3代目三遊亭円馬(えんば)が東京へ移した。幇間(たいこもち)の一八(いっぱち)は同業の繁八や芸者とともに、旦那(だんな)のお供をして京都の愛宕山へ登った。茶店で土器(かわらけ)を買って投げていた旦那が、やがて小判を投げ始めた。その小判は拾った者にやるというので、一八は傘を使って谷底へ飛び降りた。夢中で小判を拾ったが、気がつくと上へあがれないので困ってしまう。やむなく羽織、着物、帯を裂いて長い縄をつくり、竹に結び付け、竹の弾力を利用して飛び上がる。「旦那、ただいま」「よッ、えらいやつもあるものだな、一八、貴様、生涯ひいきにしてやるぞ」「ありがとう存じます」「金は?」「あァ、忘れてきた」。東京では8代目桂文楽(かつらぶんらく)がこの作を磨き上げた。上方落語の演出では、大阪の南地(みなみ)をしくじった一八と繁八の2人の幇間が、京都の祇園(ぎおん)町で商売をしていて、旦那の野掛(のがけ)について行くくだりの描写がとくにおもしろい。
[関山和夫]