(読み)あたらし

精選版 日本国語大辞典 「惜」の意味・読み・例文・類語

あたらし【惜】

〘形シク〙
① あまりすばらしいので、その価値にふさわしい扱い方をしないでおくのは惜しい。そのままにしておくのは残念だ、もったいない。
古事記(712)上「又田の阿(あ)を離ち、溝を埋むるは、地(ところ)を阿多良斯(アタラシ)とこそ〈阿より以下の七字は音を用ゐよ〉我(あ)が那勢(なせ)の命、如此(かく)(し)つらめ」
源氏(1001‐14頃)桐壺「きはことにかしこくて、ただ人にはいとあたらしけれど」
② (そのままにしておくのは惜しいほど)りっぱである。すばらしい。
万葉(8C後)一三・三二四七「沼名川(ぬながは)の 底なる玉 求めて 得し玉かも 拾(ひり)ひて 得し玉かも 安多良思吉(アタラシキ) 君が 老ゆらく惜しも」
[語誌]→「あたらしい(新)」の語誌。
あたらし‐が・る
〘他ラ四〙
あたらし‐げ
〘形動〙
あたらし‐さ
〘名〙

あたらし‐・ぶ【惜】

〘他バ上二〙 =あたらしむ(惜)
書紀(720)雄略一三年九月(前田本訓)「爰(ここ)に同伴巧者(あひたくみ)有りて、真根を歎(なげ)き惜(アタラシヒ)て、作歌して曰はく」

あったらし・い【惜】

〘形口〙 あったらし 〘形シク〙 「あたらし(惜)」の変化した語。〔温故知新書(1484)〕
※両足院本毛詩抄(1539)三「荘公の用られぬはあったらしい事哉」

おしみ をしみ【惜】

〘名〙 (動詞「おしむ(惜)」の連用形名詞化) 惜しむこと。多く「物おしみ」「出しおしみ」など、他の語と熟して用いる。→惜しみない
説経節あいごの若(山本九兵衛板)(1661)六「ももおしみのあのふのうばも」

あたらし‐・む【惜】

〘他マ四〙 おしむ。あたらしぶ。
※白氏文集天永四年点(1113)四「土に曳(ひ)き泥(に)を踏む。惜(アタラシム)心無し

おしけ・し をしけし【惜】

〘形ク〙 (「おしけく」をさらに形容詞に活用させたもの) =おしい(惜)
※源氏(1001‐14頃)胡蝶「紫のゆゑに心をしめたれば淵に身なげん名やはをしけき」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「惜」の意味・読み・例文・類語

せき【惜】[漢字項目]

常用漢字] [音]セキ(漢) シャク(呉) [訓]おしい おしむ
セキ〉思いきれず、心が残る。失いたくないと思う。おしむ。「惜春惜敗惜別哀惜愛惜痛惜
〈シャク〉おしむ。「不惜身命
難読可惜あたら

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android