悪怯(読み)わるびれる

精選版 日本国語大辞典 「悪怯」の意味・読み・例文・類語

わる‐び・れる【悪怯】

〘自ラ下一〙 わるび・る 〘自ラ下二〙 こわい、つらい、恥ずかしい、といった感情をいだき、それを表情態度・言葉に表わす。
① 強い者の前で、恐ろしさのために気後れする。臆病な態度をとる。臆する。わろびれる。
源平盛衰記(14C前)四三「東国の奴原に、わるひれて見ゆな」
悪者として捕らえられた人が、おどおどしたり、恥ずかしそうにしたりする。卑屈な態度をとる。わるぶ。わろびれる。
※屋代本平家(13C前)二「『有のままに申せ』とぞ宣ける。西光はちとも色も変ぜず、わるひれたる景気もなし」
③ 劣った者、身なりのみすぼらしい者、とされる人が、それを気にしてこそこそする。気後れする。わろびれる。
④ 自分の苦痛などを表にあらわす。つらがる。苦しがる。
※咄本・戯言養気集(1615‐24頃)上「左のみみを半分過そりおとしたり。〈略〉あいたや、あいたやと、わるびれたる声になりければ」
⑤ 別れなければならない人について未練がましくふるまう。
三河物語(1626頃)三「ねんし原に女房・子共五人、はり付にかけておく処を、彌四郎を引とおして、やりすごして見せければ、殊之外にわるびれて見ゑけるが」
人前などで恥ずかしそうにする。
ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉「令嬢は〈略〉、正面を向いてゐて、少しもわるびれた様子がない」
⑦ 気後れがしておどおどする。恐縮する。
※手は汚れない(1961)〈久能啓二〉三「平然として怜子との関係を認めたよ。恥かしがりも悪びれもしないんだ」

わろ‐び・れる【悪怯】

〘自ラ下一〙 わろび・る 〘自ラ下二〙
保元(1220頃か)下「かやうに随分の勇士共も、わろびれてすすみえず」
※平家(13C前)二「西光もとよりすぐれたる大剛の者なりければ、ちとも色も変ぜず、わろびれたるけいきもなし」
※車屋本謡曲・鉢木(1545頃)「古腹巻にさび長刀やうやうに横たへ、わろびれたるけしきもなく、参りて御前にかしこまる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android