悪僧(読み)アクソウ

デジタル大辞泉 「悪僧」の意味・読み・例文・類語

あく‐そう【悪僧】

僧でありながら戒律を守らない者。
武勇に秀でた荒々しい僧。荒法師
「落ち行く―の太刀長刀を奪ひ取って」〈太平記・一七〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「悪僧」の意味・読み・例文・類語

あく‐そう【悪僧】

〘名〙
仏道、戒律にそむいて、悪事をなす僧侶破戒僧
台記‐康治元年(1142)八月三日「召集悪僧於勧学院、付各師之」
② 勇猛な僧侶。武芸などにすぐれた僧。荒法師。僧兵のことをいうこともある。悪法師悪禅師
平家(13C前)二「戒浄房の阿闍梨裕慶といふ悪僧(あくそう)あり。たけ七尺ばかり有りけるが」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「悪僧」の解説

悪僧
あくそう

武装した僧侶・僧兵のこと
平安末期から延暦寺興福寺などの大寺院では,寺院警備と自衛などの必要から武力を蓄えるようになり,武力にすぐれた僧兵が生まれた。彼らは武力をたのみ横暴なふるまいをすることが多く,院政期の南都北嶺による強訴中心となった。悪僧の「悪」は強く勇猛の意味である。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の悪僧の言及

【悪】より

… 一方,すでに834年(承和1)の太政官符に主殿寮・主鷹司などの雑色(ぞうしき)・駈使(はせづかい)・犬飼・餌取が市で押買(おしがい)等の不法をするのを〈悪行〉とし,麁悪(そあく)な調物を〈濫悪〉〈濫穢〉といい,無法な罵言や暴力的行為を〈凶悪〉〈濫悪〉とする見方もあったが,12世紀に入るころには〈不善〉という言葉は激減し,さきの殺害などに,鳥獣,魚の殺生や分水の押妨等の行為を含めて,端的に悪行・悪事として糾弾されるようになる。殺生を悪とする仏教思想の浸透をそこにうかがうことができるが,〈党を結び,群れを成す〉といわれた悪徒・悪党は当時台頭しつつあった武士団そのもの,あるいは漁猟民を含む商工業者,金融業者などで,武装した僧兵―悪僧も大寺院が組織したこのような人々であった。これらの人々の世界では,戦場や夜,山野河海,境など,ある条件の下では〈悪〉と非難された行為を当然とし,むしろ積極的に評価する風潮が広く広がっていた。…

※「悪僧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android