悉皆(読み)しっかい

精選版 日本国語大辞典 「悉皆」の意味・読み・例文・類語

しっ‐かい【悉皆】

[1] 〘名〙
全部。すべて。みな。一切。副詞的にも用いる。
※神道集(1358頃)四「此仏の第七願云、家属資具悉皆豊足と云へり」
※自然と人生(1900)〈徳富蘆花〉写生帖「家屋敷土蔵から道具器械一式揃へて株ぐるみ悉皆(シッカイ)其人に譲って」 〔北史‐楊大眼伝〕
② 「しっかいや(悉皆屋)」の略。〔随筆守貞漫稿(1837‐53)〕
[2] 〘副〙
① 完全に一致・相似する意を表わす語。まったく。まるきり。まるで。
※天草本伊曾保(1593)鳶と、鳩の事「コノ ヲハカライワ xiccai(シッカイ) メツバウノ モトイ ナレドモ」
② (打消の語を伴って) 全然。
※玉塵抄(1563)三三「悉皆そこから梅をしらぬぞ」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉四「おとなげもなき無慈非道は、悉皆(シッカイ)本気の沙汰ではない」
③ (推量語句を伴って) きっと。確かに。
長唄隈取安宅松(1769)「お笑ひ召したは悉皆(シッカイ)在所の、庄屋殿だんべい」
[語誌]仏書資料に多く漢文資料には極めてまれであるため、仏書の用語と見られ、本来用法は(一)①であって、これが転じて(二)のように副詞として使用されるに至ったものと考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「悉皆」の意味・読み・例文・類語

しっ‐かい【×悉皆】

[副]
残らず。すっかり。全部。
「少しも包み隠さず、―話してしまって」〈二葉亭訳・めぐりあひ〉
まるで。
「白いふんどしで、かご胴中をくくった所は、―おやしきの葬礼といふものだ」〈滑・膝栗毛・三〉
(あとに打消しの語を伴って用いる)全然。まったく。
「―それは武士たるもののしわざならず」〈浄・凱陣八島〉
[類語]凡て何もかもことごとくなべて残らず余すところなく漏れなく逐一ちくいちすっかりそっくり洗いざら一から十までくまなく根こそぎ虱潰しあまねく満遍ない万事一切一切合財丸ごとごっそりすっぽりいちいち細大漏らさず何でもかんでも根掘り葉掘り

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「悉皆」の読み・字形・画数・意味

【悉皆】しつかい

すべて。〔北史、楊大眼伝〕大眼、不學と雖も、恆に人をして書を讀ましめ、坐して之れを聽き、悉皆記(きし)す。令して露布を作(な)すに、皆之れを口授す。而れども(つひ)に多くは字をらざるなり。

字通「悉」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android