息長(読み)おきなが

精選版 日本国語大辞典 「息長」の意味・読み・例文・類語

おきなが【息長】

滋賀県琵琶湖東岸、近江町の旧地名。息長川(天野川)が流れる。歌枕
書紀(720)天武元年七月(北野本訓)「男依等、近江の軍と、息長(ヲキナカ)横河(よくかは)に戦ひて破りつ」

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日本歴史地名大系 「息長」の解説

息長
おきなが

坂田郡南部の地名。「日本書紀」天武天皇元年(六七二)七月七日条に「男依等、近江の軍と、息長の横河に戦ひて破りつ。其の将境部連薬を斬りつ」とあり、壬申の乱の緒戦が息長の横河よかわで行われている。息長は横河の比定地からみて坂田郡南部の東山道沿いの地名であることは明らかであり、「万葉集」巻一三の歌に「階立つ筑摩左野方つくまさのかた 息長の遠智おちの小管 編まなくに い刈り持ち来 敷かなくに い刈り持ち来て 置きて われを偲はす 息長の 遠智の小管」とあるので、天野あまの川河口近くの筑摩(現米原町)も息長の地域に含まれることが判明する。また天平一九年(七四九)一二月二二日の坂田郡司解(正倉院文書)に「近江国坂田郡上丹生郷戸主堅井国足戸口息長真人真野売」が、「権記」長徳元年(九九五)一〇月二四日条に筑摩御厨長息長光保がみえ、息長を氏名に負う息長氏が坂田郡南部に居住することも確認される。

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百科事典マイペディア 「息長」の意味・わかりやすい解説

息長【おきなが】

滋賀県坂田郡南部の地名。《日本書紀》天武1年(672年)7月7日条によると,壬申(じんしん)の乱の緒戦が〈息長の横河〉で行われており,《万葉集》にも息長を詠み込んだ歌がある(巻13)。当地の古代氏族に息長氏がいる。同氏は《古事記》《日本書紀》にみえる皇室系譜に深くかかわっていることや,《日本書紀》天武13年(684年)10月1日条の天武八姓において皇族出身の氏族に与えられる〈真人(まひと)〉を得ているところから,大和政権において大きな勢力を有したであろうことが推定され,さらに5世紀末に断絶した仁徳(にんとく)朝にかわって新王朝を樹立した継体(けいたい)天皇の出身氏族とする説もある。

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