恐山(読み)おそれざん

精選版 日本国語大辞典 「恐山」の意味・読み・例文・類語

おそれ‐ざん【恐山】

青森県下北半島北部の火山。最高峰釜臥山(八七九メートル)。中央部のカルデラに、宇曾利山(うそりやま)湖や菩提寺円通寺)、温泉がある。毎年七月の大祭の際の「いたこ」の口寄せで知られる。高野山、比叡山とともに日本三大霊場の一つ。おそれやま。宇曾利山。

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デジタル大辞泉 「恐山」の意味・読み・例文・類語

おそれ‐ざん【恐山】

青森県、下北半島北部の火山。標高828メートル。山頂はカルデラが形成され、火山湖や温泉があり、多数の硫気孔が異様な景観を呈する。湖岸の円通寺では7月の地蔵講に「いたこ」とよばれる巫女みこ口寄せが行われる。宇曽利うそり山。

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日本歴史地名大系 「恐山」の解説

恐山
おそれざん

下北半島の北部中央に噴出する円錐状火山で「おそれやま」ともいい、宇曾利うそり山とも称する。直径約六キロのほぼ円形のカルデラを有し、その中央に標高二一四メートル、直径約二キロに及ぶ宇曾利山うそりやま(恐山湖)をたたえる。湖の北東から三途川さんずのかわが流れ出、正津しようづ川となって東流し、津軽海峡に注ぐ。三途川には太鼓橋が架かる。湖の北に中央火口丘の鶏頭けいとう山・地蔵じぞう山(羅陀からだ山)・つるぎ山、南に外輪山大尽おおづくし(八二七・七メートル)小尽こづくし(五一三メートル)屏風びようぶ(五八〇・三メートル)などがあり、蓮華八葉とよばれ、さらに南に釜臥かまふせ(八七八・六メートル)、西に寄生火山朝比奈あさひな(八七四メートル)がそびえる。北湖畔に花染はなぞめの湯などの恐山温泉や数多くの硫気孔がある。また地蔵堂はじめ本坊・宿坊、賽河原さいのかわらの地蔵堂、納骨塔などの堂塔があり、この一帯は宇曾利山湖湖面とともにむつ市の飛地となっている。下北半島国定公園の東部をなす。

日本三大霊場の一とされる霊峰で、慈覚大師開山伝説が残る。文化七年(一八一〇)再刊の「奥州南部宇曾利山釜臥山菩提寺地蔵大士略縁起」によれば、円仁は中国で修行中に、京都の東方三〇余日の行程の所に霊山がある、帰国後そこを訪ねよ、との霊夢を得て帰国し、布教の旅にのぼり、下北に至ったという。釜臥山にこもった円仁が当山に霊場を開くに至るいきさつを同書は次のように記す。

<資料は省略されています>

このとき鵜鳥がそれるのを見て当地のあるのを知ったところから鵜翦うそれ山の名が生れたという。地蔵堂を守る寺は「恐居山金剛念寺」、略して「峰の寺」とよばれたといい(田名部町誌)、「東北太平記」によれば康正(一四五五―五七)の頃「峰の寺」の別当大締なる修験が蠣崎蔵人にくみして活躍している。

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改訂新版 世界大百科事典 「恐山」の意味・わかりやすい解説

恐山 (おそれざん)

青森県北東部,下北半島北部に位置する円錐形の火山と外輪山の総称。〈おそれやま〉あるいは宇曾利(うそり)山ともいい,恐山の名はこの地の菩提寺(円通寺)の山号に由来している。流紋岩,石英安山岩輝石安山岩などからなり,中央に直径約4kmのカルデラをもつ。これをとりまく外輪山として,最高峰の大尽(おおつくし)山(828m)をはじめ,屛風山,北国山,障子山,小尽山,円山などの山々が連なり,さらにその外側には,釜臥(かまぶせ)山,朝比奈岳などの寄生火山がそびえている。カルデラの内側には直径2kmで,ほぼ円形の宇曾利山湖(恐山湖)があり,北東端から正津川が火口瀬となって津軽海峡に流出している。宇曾利はアイヌ語で〈入江〉の意の〈ウショロ〉に由来し,湖には酸に強いウグイがわずかに生息している。噴火の記録はないが,宇曾利山湖の北岸には多数の噴気孔や温泉があり,付近の岩石は黄白色に分解して変質しており,植物もシャクナゲ以外はほとんど育たず,一種異様な光景を現出している。宇曾利山湖北岸にある円通寺地蔵堂の境内には,恐山温泉(硫化水素泉,65~76℃)が湧出しており,宿坊としても利用されている。毎年7月末に行われる円通寺の夏参りには,全国から多数の参拝客が集まる。この地は薬研温泉,尻屋崎,仏ヶ浦などとともに下北半島国定公園に指定されたこともあって,大祭期間以外でも訪れる観光客が多くなった。
執筆者:

下北半島一円では恐山は死者の霊魂が集まる山とされ,屛風山,北国山,小尽山などの外輪山は蓮華八葉をかたどるものといわれ,宇曾利山湖畔には極楽浜が設定されている。これに対して硫黄の噴気孔などには血の池地獄,無間(むげん)地獄,重罪地獄をはじめとする各種地獄や賽の河原などが展開されている。このように円通寺(曹洞宗)の山寺と呼ばれる地蔵堂を中心とした恐山は,極楽・地獄の二相を呈しており,死霊・祖霊信仰を核とする他界観念に地蔵信仰が習合して一大霊場を形成している。また恐山は,下北一円に分布し,比較的高齢者層の女性の集りであるためババ講と通称される地蔵講とも密接な関係を有している。恐山の祭典は春,夏,秋の年3回でそれぞれ春参り,夏参り,秋参りと呼ばれ,とくに夏参りは死者供養に中心がおかれ,いたこの口寄せなども行われるところから多くの参詣者でにぎわう。これに対して春秋のお参りは死者供養というよりもむしろ豊作・豊漁祈願,家内安全などの現世利益的信仰がその中心を占めている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「恐山」の意味・わかりやすい解説

恐山
おそれざん

青森県北東部,下北半島中央部にある活火山。別称宇曾利山。恐山山地の中心で,宇曾利山湖を取り囲む外輪山などからなり,最高峰は釜臥山(878m)。カルデラ湖の宇曾利山湖はエメラルド色の水をたたえ,東北端から正津川となって流出。湖の周囲にはおもに流紋岩,輝石安山岩からなる大尽山,小尽山,屏風山,円山などの外輪山,釜臥山,朝比奈岳の寄生火山をもつ。湖の北岸には多くの硫気孔や温泉があり,硫黄性ガスが噴出して植物はほとんど生育しない。岩石は分解して黄白色を呈し,異様な景観を現出。周辺山地にはヒバの美林がある。地名はアイヌ語のウショロ(くぼみの意)に由来。湖畔の恐山菩提寺は日本三大霊場の一つで,9世紀頃円仁が開基,本尊は延命地蔵尊。霊場一帯には賽の河原の小石の山が続く。毎年 7月の恐山大祭には,イタコ(巫女)によって口寄せ(霊媒術)が行なわれる。霊場内には硫化水素を含む酸性緑礬泉の恐山温泉がある。1968年恐山を中心に下北半島の西海岸にかけての地域と,北西端の大間崎,北東端の尻屋崎下北半島国定公園に指定された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「恐山」の意味・わかりやすい解説

恐山
おそれざん

青森県北東部、下北半島の北部を占める火山。「おそれやま」ともいう。山体はほぼ円錐(えんすい)形で、山頂に直径約4キロメートルのカルデラを形成している。周囲の外輪山には大尽(おおづくし)山をはじめ、屏風(びょうぶ)山、北国山、小尽(こづくし)山などがあり、その外部には寄生火山の釜臥(かまぶせ)山、朝比奈(あさひな)岳などがある。石英粗面岩、輝石安山岩などからなり、基底をなす第三紀層の上に噴出したものである。カルデラの内部には直径約2キロメートル、ほぼ円形の宇曽利山湖(うそりやまこ)がある。湖の周囲には多数の硫気孔があって、植物が育たず、一種異様な風景を展開する。北岸の一角に862年(貞観4)慈覚大師円仁(えんにん)が開いたとされる円通寺があり、高野山(こうやさん)、比叡山(ひえいざん)とともに日本三大霊場の一つとされ、信仰の山として知られる。円通寺の山門を入ると両側に40基以上の石灯籠(どうろう)が並び、境内の奥の本堂まで続く参道がある。境内には本殿、宿坊、湯小屋などの建物がある。また地獄谷、賽(さい)の河原(かわら)、極楽浜などとよばれる場所があり、石積みの小山、卒塔婆(そとば)などが散在し、硫気孔から噴出する亜硫酸ガスが立ちこめ、荒涼とした風景をみせる。恐山は死者の集まる山とされ、7月20~24日の恐山大祭には参詣(さんけい)人と観光客でにぎわい、境内の至る所で「いたこ」とよばれる巫女(みこ)の口寄せが行われ、死者との会話に涙する老女の姿がみられる。恐山円通寺境内に大小60もの泉源があり、そのなかで湯量が多く泉温の高いものが浴用に利用されている。古滝の湯、薬師の湯、冷抜の湯、花染の湯とよばれる四つの湯小屋がある。

[横山 弘]

『楠正弘著『下北の宗教』(1967・平凡社)』


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百科事典マイペディア 「恐山」の意味・わかりやすい解説

恐山【おそれざん】

青森県下北半島の中央部にある円錐形活火山。宇曾利山(うそりやま)ともいう。古生層と第三紀層を基盤とし,輝石安山岩,石英粗面岩からなる。中央の火口湖宇曾利山湖を囲み,大尽(おおつくし)山(最高峰828m),朝日奈岳など蓮華八葉と呼ばれる外輪山と,寄生火山の釜臥(かまぶせ)山がある。恐山湖北岸は多数の硫気孔があり,温泉がわき,東北地方の霊場円通寺(地蔵堂)がある。円仁の開創と伝え,毎年7月の大祭には〈おしらさま〉をまつる巫女(みこ)(いたこ)が口寄を行い,参拝者が集まる。死者の霊が集まる山とされるが,春秋の参詣は豊作など現世利益的なものとされる。
→関連項目青森[県]大畑[町]下北半島下北半島国定公園むつ[市]

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旺文社日本史事典 三訂版 「恐山」の解説

恐山
おそれざん

青森県下北半島にある霊場
硫黄ガスが噴出する火口原は,古くから台密系修験道の道場とされる。死霊の止まる山と信じられ,明治・大正ころから毎年7月の大祭には東北各県のいたこが集まり,死者の霊を呼びもどす口寄せが行われる。

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事典・日本の観光資源 「恐山」の解説

恐山

(青森県むつ市)
日本三大霊山」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の恐山の言及

【温泉】より

…この温泉による霊験は,熊野参詣者が熊野川の水で身を清めてから本宮に参拝する儀礼行為と対応しているのであろう。同様に東北最北端の恐山は死霊の集まる霊山とされているが,その宇曾利山湖の周辺には強烈な臭気を発する硫黄泉が噴出し,参詣者の心身をいやす温泉場が設けられている。また出羽三山の一角を占める湯殿山でも,山頂にある神体の大石からは熱泉があふれ,登拝者は裸足をひたして心身のよみがえりを祈る。…

【鶏冠石】より

…低温熱水鉱脈,火山昇華物,温泉沈殿物中に含まれて産出し,しばしば輝安鉱Sb2S3,石黄As2S3を伴う。日本では群馬県西牧鉱山,北海道手稲鉱山,青森県恐山が産地として有名である。量的にまとまって産出することはまれで,ヒ素資源としては重要でない。…

※「恐山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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