精選版 日本国語大辞典 「恋」の意味・読み・例文・類語
こいし・い こひしい【恋】
〘形口〙 こひし 〘形シク〙
※万葉(8C後)一八・四一一八「かくしても相見るものを少くも年月経れば古非之家礼(コヒシケレ)やも」
※竹取(9C末‐10C初)「恋しからむことの耐(た)へがたく、湯水飲まれず」
② 特に、男女間で、慕いこがれる気持にいう。こおし。
※万葉(8C後)一四・三四五五「古悲思家(コヒシケ)ば来ませわが背子垣つ柳(やぎ)末(うれ)摘みからしわれ立ち待たむ」
[語誌]動詞「こふ(恋)」の形容詞形。時間・距離・気持などで隔たっていて、身近に存在しない対象に対し、心が強くひかれ、接したいと思う気持を表わす。古くは、「万葉集」の用例中七割が、「古今集」では八割が、特定の人物を対象として、しかもほとんどは男女間での愛情をいう。
こいし‐が・る
〘他ラ五(四)〙
こいし‐げ
〘形動〙
こいし‐さ
〘名〙
こい こひ【恋】
〘名〙 (動詞「こう(恋)」の連用形の名詞化)
① 人、土地、植物、季節などを思い慕うこと。めでいつくしむこと。
※万葉(8C後)三・三二五「明日香河川淀去らず立つ霧の思ひ過ぐべき孤悲(コヒ)にあらなくに」
※源氏(1001‐14頃)若紫「をさなき程に恋やすらむ」
② 異性(時には同性)に特別の愛情を感じて思い慕うこと。恋すること。恋愛。恋慕。
※常陸風土記(717‐724頃)香島「既に故(ふる)き恋の積れる疹(やまひ)を釈(と)き」
※新古今(1205)恋一・一〇二九「我が恋はまきの下葉にもる時雨ぬるとも袖の色に出でめや〈後鳥羽院〉」
※歌謡・閑吟集(1518)「まつ宵はふけ行鐘をかなしび、あふ夜は別のとりをうらむ、恋ほどの重荷あらじ、あらくるしや」
③ 和歌、連歌、俳諧などで恋愛を題材とした作品。また、その部立(ぶだて)。
※連理秘抄(1349)「一、句数 春・秋・恋 以上五句」
④ 愛人。情婦。
※にごりえ(1895)〈樋口一葉〉七「其れをば思はで我が情婦(コヒ)の上ばかりを思ひつづけ」
こ・う こふ【恋】
〘他ハ上二〙
① 人・土地・植物・季節などを思い慕う。また、めでいつくしむ。
※書紀(720)斉明七年一〇月・歌謡「君が目の恋(こほ)しきからに泊(は)てて居てかくや姑悲(コヒ)むも君が目を欲(ほ)り」
※観智院本三宝絵(984)下「恩を思ふ人いかでか昔をこひざらむ」
② 異性(時には同性)に特別の愛情を感じて思い慕う。恋する。恋慕する。
※古事記(712)上・歌謡「股長(ももなが)に 寝(い)は寝(な)さむを あやに な古斐(コヒ)聞こし 八千矛の 神の命(みこと)」
※万葉(8C後)一五・三七五〇「天地(あめつち)の極(そこひ)のうらにあが如く君に故布(コフ)らむ人はさねあらじ」
こうし こふし【恋】
〘形シク〙 (「こひし(恋)」の上代東国方言) =こいしい(恋)
※万葉(8C後)一四・三四七六「うべ子なは吾(わぬ)に恋ふなも立(た)と月(つく)の流(ぬが)なへ行けば故布思可流(コフシカル)なも」
こおし こほし【恋】
※書紀(720)斉明七年一〇月・歌謡「君が目(め)の姑裒之枳(コホシキ)からに泊(は)てて居てかくや恋ひむも君が目を欲(ほ)り」
こい‐・する こひ‥【恋】
〘他サ変〙 こひ・す 〘他サ変〙 恋をする。恋い慕う。恋う。
※万葉(8C後)一一・二三九〇「恋為(こひするに)死にするものにあらませばあが身は千たび死かへらまし」
※源氏(1001‐14頃)総角「こひする男のすまひなどかきまぜ」
くふし【恋】
〘形シク〙 「こほし(恋)」の上代東国方言。恋しい。慕わしい。
※万葉(8C後)二〇・四三四五「吾妹子(わぎめこ)と二人わが見しうち寄(え)する駿河の嶺らは苦不志久(クフシク)めあるか」
こ・いる こひる【恋】
〘他ア上一(ハ上一)〙 →「こう(恋)」の語誌(3)
こいし こひし【恋】
〘形シク〙 ⇒こいしい(恋)
こい‐・す こひ‥【恋】
〘他サ変〙 ⇒こいする(恋)
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