恋娘昔八丈(読み)こいむすめむかしはちじょう

精選版 日本国語大辞典 「恋娘昔八丈」の意味・読み・例文・類語

こいむすめむかしはちじょう こひむすめむかしハチヂャウ【恋娘昔八丈】

[一] 浄瑠璃世話物。五段。松貫四・吉田角丸合作。安永四年(一七七五江戸外記座(げきざ)初演。江戸の材木商白子屋の娘お熊が婿の又四郎を殺そうとした事件を、萩原家のお家騒動と合わせて脚色し、萩原家の家老の子才三郎と腰元お駒の情話としたもの。通称お駒才三」。
[二] 新内節。三段。(一)の転用で、「城木屋」「鈴ケ森」のほかに、「城木屋」の後半「婿入の段」が加えられた。前二者は天保~嘉永一八三〇‐五四)頃の作曲

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デジタル大辞泉 「恋娘昔八丈」の意味・読み・例文・類語

こいむすめむかしはちじょう〔こひむすめむかしハチヂヤウ〕【恋娘昔八丈】

浄瑠璃世話物。五段。松貫四・吉田角丸合作。安永4年(1775)江戸外記座初演。材木商白子屋の娘お熊が婿を殺害した罪で鈴ヶ森処刑された事件を、お家騒動にからめて城木屋の娘お駒と髪結い才三郎との情話として脚色したもの。お駒才三。
新内節。三段。の「城木屋」と「鈴ヶ森」の段を、初世鶴賀若狭掾つるがわかさのじょうが移曲したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「恋娘昔八丈」の意味・わかりやすい解説

恋娘昔八丈 (こいむすめむかしはちじょう)

人形浄瑠璃。時代物。5段。松貫四・吉田角丸合作。1775年(安永4)8月中旬江戸外記座初演(《義太夫熱心録》《宴遊日記別録》による)。ただし正本刊記は9月25日とある。荻原家の若殿千草之助は傾城十六夜におぼれ,悪家老秋月一角の悪計にはまり,家宝の茶入れを奪われる。家老の尾花六郎左衛門はわが子才三郎を茶入れ盗人に仕立て事態をおさめようとするが,荻原の後室は才三郎を逃がし,宝の詮議をさせる。才三郎の恋人城木屋のお駒は,家の困窮のため持参金付の喜蔵と結婚することにする。才三郎は喜蔵が茶入れ盗人であると知り,詮議のうち喜蔵に組みしかれ,お駒は才三郎を救おうとして喜蔵を刺殺してしまう。捕らえられたお駒は鈴ヶ森で処刑されようとするが,千草之助と才三郎の努力により許される。福内鬼外作《神霊矢口渡》とともに数少ない江戸浄瑠璃である。1727年(享保12),材木商の白木屋に起きた事件を,荻原家のお家騒動にからませて脚色したもの。外題死罪になった実在のお熊(お駒)が黄八丈の小袖を着て引き回されたことによる。初演時に豊竹筆太夫が語った〈城木屋の場〉が好評で,翌年5月まで年を越して上演する大当りであったという。お家騒動のくだりは類型的で,現在はお駒才三を扱った城木屋,鈴ヶ森の場を中心に上演される。本作は,新内節の《城木屋》ほか各流の浄瑠璃や歌舞伎に影響を与え,河竹黙阿弥作《梅雨(つゆ)小袖昔八丈》なども本作の書替狂言である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「恋娘昔八丈」の意味・わかりやすい解説

恋娘昔八丈
こいむすめむかしはちじょう

浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)。世話物。5段。松貫四(まつかんし)、吉田角丸合作。1775年(安永4)8月江戸・外記座(げきざ)初演。江戸新材木町の材木商白子屋(しろこや)の娘お熊が手代らと共謀して婿を殺害した罪で処刑された事件(1727)を脚色したもので、四段「城木屋(しろきや)」と五段「鈴ヶ森」が知られる。城木屋の娘お駒(こま)は髪結い才三郎(さいざぶろう)と恋仲だが、家のため持参金付きの婿喜蔵を迎えることになる。もと侍の才三郎は、盗まれた家宝の茶入れを喜蔵が所持することを知り、お駒に取り戻すことを頼む。お駒は横恋慕の番頭丈八(じょうはち)に唆され、喜蔵を毒殺したため、鈴ヶ森の刑場に引かれるが、処刑の寸前、喜蔵が親殺しの下手人という才三郎の訴えにより、罪を許される。題名は、お駒が刑場に引かれるとき、黄八丈の着物を着ていたのによる。浄瑠璃、歌舞伎(かぶき)の一系統「お駒才三(さいざ)物」の基盤になった作品。なお、新内節にもこれを転用した同題の曲がある。

[松井俊諭]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「恋娘昔八丈」の解説

恋娘昔八丈
こいむすめ むかしはちじょう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
松貫四 ほか
初演
安永5.3(江戸・中村座)

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世界大百科事典(旧版)内の恋娘昔八丈の言及

【城木屋】より

…新内節の曲名。義太夫節の一部をとって新内化した段物《恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじよう)》(通称《お駒才三(おこまさいざ)》)の一部。同名の義太夫節《恋娘昔八丈》が流行曲となったので,天保~嘉永(1830‐54)のころ,2世鶴賀鶴吉の時代に,その四段目《城木屋》から脚色された。…

【松貫四】より

…業余に浄瑠璃を書き,1774年(安永3)以来12年間に計8曲を上演して,福内鬼外(ふくうちきがい)(平賀源内),紀上太郎(きのじようたろう)とともに江戸操芝居の盛況に貢献した。いずれも合作だが,なかでも75年江戸外記(げき)座で上演した《恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじよう)》は初世竹本筆太夫の美音もあって記録的な大入りをとり,85年(天明5)江戸結城座の《伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)》とともに立作者としての名を高からしめた。彼の作品はほとんど先人の作に手を加えたもので浄瑠璃の常套(じようとう)を出たものではないが,作中に江戸の風俗を点描するなど目新しさがあり,江戸市中に大いに迎えられた。…

※「恋娘昔八丈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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