性霊派(読み)せいれいは

日本大百科全書(ニッポニカ) 「性霊派」の意味・わかりやすい解説

性霊派
せいれいは

中国の文学流派。清(しん)の袁枚(えんばい)(号は随園(ずいえん))を中心とする詩の一派。彼は、詩は自分の感情、自分の個性を表現すべきものであるとし、性情の自由な流霊を尊重した。同時代の復古主義的傾向を代表する沈徳潜(しんとくせん)の格調派と対立し、彼らとは逆に古人の詩や技巧にとらわれない性霊の自由を目ざす。ゆえに袁枚の作品およびその一派は叙情性を評価する。宮廷派の沈徳潜に対して在野派とでもいうべき存在だった。周辺に大ぜいの男女の弟子を集め、南京(ナンキン)城の大邸宅随園での豊かな生活は、おもにその作品活動により支えられていた。思想的にも明(みん)末の袁宏道(えんこうどう)に通ずるものがあるが、文人的であり権力に抵触するような面はもたない。『随園詩話』がある。

佐藤一郎

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「性霊派」の意味・わかりやすい解説

性霊派
せいれいは
Xing-ling pai

中国,清代の詩の一流派。袁枚 (えんばい) の主張した性霊説によるもの。南宋楊万里と明の袁宏道の説を基とし,個性を尊重し,人の性は自由に流露するときにこそ霊妙な働きをもつとした。詩風としては清新軽俊を掲げ,古文辞派の流れを継ぐ沈徳潜 (しんとくせん) らの格調派に反対した。袁枚が在野的であったのに応じ,広範な階層の間に行われた。

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世界大百科事典(旧版)内の性霊派の言及

【中国文学】より

…袁宏道(えんこうどう)(中郎)を中心とする公安派と,鍾惺(しようせい)らの竟陵(きようりよう)派とである。この論争は清朝まで尾を引く(日本では格調派と性霊派とよばれる)。しかし論者自身の実作を見ると,李夢陽は壮大な風景を歌った力づよい詩を作り,何景明の作は優美な抒情性に富み,けっして空疎ではない。…

※「性霊派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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