性腺刺激ホルモン(読み)セイセンシゲキホルモン

デジタル大辞泉 「性腺刺激ホルモン」の意味・読み・例文・類語

せいせんしげき‐ホルモン【性腺刺激ホルモン】

生殖腺せいしょくせん刺激しげきホルモン

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精選版 日本国語大辞典 「性腺刺激ホルモン」の意味・読み・例文・類語

せいせんしげき‐ホルモン【性腺刺激ホルモン】

〘名〙 (ホルモンはHormon) 脳下垂体前葉から分泌される生殖腺を刺激する蛋白系ホルモン。脊椎動物では卵胞濾胞)刺激ホルモン、黄体形成ホルモンがある。生殖腺刺激ホルモンゴナドトロピン。略称GRH。〔人体機能(1952)〕

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内科学 第10版 「性腺刺激ホルモン」の解説

性腺刺激ホルモン(下垂体前葉ホルモン)

(5)性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン(gonadotropin),黄体形成ホルモン(黄体化ホルモン,luteinizing hormone:LH),卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone:FSH))
a.化学構造と生合成
 性腺刺激ホルモンであるLHFSHはゴナドトロピン分泌細胞により分泌される糖蛋白ホルモンであり,TSHと共通のαサブユニットと,LHは121個の,FSHは111個のアミノ酸残基からなる特異的なβサブユニットとがそれぞれ二量体を形成している.LHとFSHの作用の特異性はそれぞれのβサブユニットの構造の特異性に依存している.
b.作用
 LHおよびFSHの受容体は細胞膜を7回貫通するG蛋白質共役型である.男性では,FSHはSertoli細胞に作用して精子形成に,LHはLeidig細胞(間質細胞)のテストステロン産生に,女性では,FSHは卵胞の発育,成熟,エストロゲン産生に,LHは排卵,黄体化,プロゲステロン,エストロゲン産生に重要な役割を担っている.FSHは卵巣の顆粒膜細胞と精巣のSertoli細胞のインヒビンとアクチビン産生を促進する.
c.分泌調節
 LH,FSHの分泌は視床下部から脈動的に分泌されるGnRHによる促進的調節と性ステロイドによる制御を受け,パルス状の間欠的な分泌を示す.女性の月経周期において,卵胞期と黄体期には血中LH,FSH値は低く,排卵期には両者とも大きな排卵性分泌を示し,パルスの頻度と振幅は月経周期で異なる.男性では,LH,FSHの低いパルス状分泌がみられる.性腺から分泌されるインヒビン(inhibin)はFSHの分泌を制御する.閉経後の女性や高齢男性では性腺機能が低下し,性ステロイドホルモンによる負のフィードバック機構が働かないため,血中LH,FSHは上昇する.GnRHと性腺刺激ホルモンの分泌調節に関与するペプチドホルモンが新たに発見された.視床下部に発現している性腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(gonadotropin-inhibitory hormone:GnIH)はGnRH神経細胞に抑制的に,また下垂体門脈を介して下垂体の性腺刺激ホルモン分泌細胞にも抑制的に作用する.キスペプチン(kisspeptin)は視床下部に発現し,排卵前のGnRH/LHサージの出現や性腺刺激ホルモンのパルス状分泌の出現に関与していると考えられている.[芝﨑 保]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「性腺刺激ホルモン」の意味・わかりやすい解説

性腺刺激ホルモン
せいせんしげきほるもん

性腺(生殖腺)における性ホルモン分泌や配偶子形成を促進し、また性周期の形成に関与するホルモンで、生殖腺刺激ホルモンともいう。下垂体前葉より分泌されるが、妊娠時には胎盤からも分泌される。下垂体前葉から分泌されるものとしては、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の2種類がある。

[川上正澄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「性腺刺激ホルモン」の意味・わかりやすい解説

性腺刺激ホルモン
せいせんしげきホルモン
gonadotropic hormone; gonadotropin

向性 (殖) 腺ホルモンまたはゴナドトロピンともいう。精巣や卵巣に刺激を与え,その発育,機能を保持,調整するホルモンの総称。下垂体前葉から分泌される性腺刺激ホルモンとしては,卵胞刺激ホルモン (FSH) と黄体化ホルモン (LH) がある。また胎盤中に存在する胎盤性ゴナドトロピンも性腺刺激作用を示す。前葉性,胎盤性ホルモンはともに性周期,妊娠と密接な関係があり,量的な増減を示し,単独に,あるいは協同的,拮抗的に性腺に作用して,一切の生殖腺の活動を支配している。これらホルモンの分泌の過程では,下垂体前葉は間脳中枢の調節を受け,また卵巣ホルモンなどの上向性調節や,ほかの前葉ホルモンの影響を受ける。

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改訂新版 世界大百科事典 「性腺刺激ホルモン」の意味・わかりやすい解説

性腺刺激ホルモン (せいせんしげきホルモン)

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栄養・生化学辞典 「性腺刺激ホルモン」の解説

性腺刺激ホルモン

 →ゴナドトロピン

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世界大百科事典(旧版)内の性腺刺激ホルモンの言及

【月経】より

…性周期は,間脳・脳下垂体‐卵巣系における神経系と内分泌系との間の,一種の生体自動調節機構によってもたらされるもので,脳の視床下部脳下垂体前葉と卵巣とが相互に作用しあい,それぞれからのホルモン分泌が巧妙に調節されて起こる。
[月経周期]
 間脳・視床下部の支配のもとに,脳下垂体前葉から,月経周期に応じて,2種類の性腺(または生殖腺)刺激ホルモン(ゴナドトロピン),すなわち卵胞(または濾胞)刺激ホルモンfollicle‐stimulating hormone(FSHと略記)と黄体形成ホルモンluteinizing hormone(LHと略記)が規則正しく周期的に血中に分泌される。卵胞刺激ホルモンは卵胞を刺激して卵胞を成熟させる。…

【ゴナドトロピン】より

…生殖腺(性腺)刺激ホルモンともいう。脊椎動物では,脳下垂体前葉から分泌される卵胞(濾胞)刺激ホルモンfollicle‐stimulating hormone(FSHと略す)と黄体形成ホルモンluteinizing hormone(LHと略す)または間質細胞刺激ホルモンinterstitial cell‐stimulating hormone(ICSHと略す)の2種のホルモンと,胎盤から分泌される絨毛(じゆうもう)(膜)性ゴナドトロピンchorionic gonadotropin(CGと略すが,ヒトの場合はhCGと略す)が含まれる。…

【脳下垂体】より

…男性では,LHは睾丸の間質細胞(ライディヒ細胞)のテストステロンの合成と分泌を促進する。卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの両者を合わせて性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)と呼ぶ。性ホルモン【藤田 尚男】【石橋 みゆき】
[隆起部]
 隆起部の組織構造は,前葉のそれと本質的には同じであるものの,色素嫌性細胞が多くみられ,隆起部細胞と呼ばれているが,その働きについてはわかっていない。…

※「性腺刺激ホルモン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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