急須(読み)きゅうす

精選版 日本国語大辞典 「急須」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐す キフ‥【急須】

〘名〙
① 昔、中国で酒の燗(かん)をする鍋(なべ)
取っ手のついている小さい土瓶(どびん)。湯をさして茶を煎じ出すのに用いるもの。きびしょきびしょう茶出し。〔和英語林集成再版)(1872)〕
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一八「急須(キウス)の茶を酌(くみ)て源作の前にいだしながら」
③ (形動) 急場の時に必要であること。また、そのような物。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一三「今この災に逢へる家こそ、急須なるべければ、この金を与へ給へと云ひしとなり」

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デジタル大辞泉 「急須」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐す〔キフ‐〕【急須】

[名]《もと中国で、酒のかんをした注ぎ口のある小鍋》湯をさして茶をせんじ出すのに用いる、取っ手のついた小さい器。きびしょ。茶出し。
[名・形動]急場のときに必要なこと。また、そのさま。
「今この災に逢える家こそ―なるべければ、この金を与え給え」〈中村訳・西国立志編
[類語]土瓶ティーポット鉄瓶薬缶湯桶湯沸かしケトル

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普及版 字通 「急須」の読み・字形・画数・意味

【急須】きゆう(きふ)す

酒の燗をする鍋。きびしょ。〔三余贅筆〕の人、酒をむるを呼びて須と爲し、飮むるを呼びて僕と爲す。須とは、其のに應じて用ふるを以てなり。

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改訂新版 世界大百科事典 「急須」の意味・わかりやすい解説

急須 (きゅうす)

煎茶器の一種。茶瓶,茶注などともいう。小型の土瓶ともいうべきもので,おもに陶磁器であるが金属製のものもある。急焼,急備焼とも書き,〈きびしょう〉〈きびしょ〉とも呼ぶ。もともとは中国で酒を暖める具とされていたが,江戸時代に日本に伝えられ,煎茶に用いられるようになったとされる。現在では湯缶(とうかん)と呼ぶ湯わかしときゅうすとは別のものと区別されているが,もともと両者は同じであり,それを〈二物のごとくもてはやす俗習〉が生じたのは30~40年このかたのことだと,尾張藩儒者である深田精一はその著《煎茶訣(せんちやけつ)》(1849成立)に述べている。煎茶道の祖とされる売茶翁高遊外は中国製のものを愛用し,清水六兵衛がそれを模したものは世上売茶(翁)形と呼んで珍重された。これは手と注ぎ口が直角についているもので,煎茶器に多くの名品をのこした青木木米のきゅうすもこの形が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「急須」の意味・わかりやすい解説

急須
きゅうす

煎茶(せんちゃ)器の一つで、お茶出しの用具。一般に注(つ)ぎ口と取っ手(握り)をつけた陶磁製のものが広く用いられているが、取っ手のないものは宝瓶(ほうへい)、鉉(つる)のかかったものは土瓶(どびん)とよんで区別している。容量は普通200~600ccで、中に煎茶などの葉を入れ、湯をさして煎じ出し、茶碗(ちゃわん)に注ぐ。玉露(ぎょくろ)用は小型で、急備焼(きびしょ、きびしょう)、茶出しなどともいう。

 急須は中国の明(みん)時代に考案され、酒の燗(かん)具として用いられていたが、日本には室町時代に渡来し、文化・文政(ぶんかぶんせい)期(1804~30)以降、煎茶の流行とともに普及した。京都の陶工たちにより名器も製作され、ことに青木木米(もくべい)や池大雅(いけのたいが)らの文人・画人にもてはやされて、個性的な自作の急須も生まれた。幕末の女流歌人大田垣蓮月(おおたがきれんげつ)は、自詠の和歌を刻んだものを多く残している。現在、常滑(とこなめ)焼(愛知)、相川(あいかわ)焼(新潟)、万古(ばんこ)焼(三重)、清水(きよみず)焼(京都)などが有名で、陶磁製のほか銀、錫(すず)、銅、アルマイトなどの金属製も出回っている。

[宮垣克己]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「急須」の意味・わかりやすい解説

急須
きゅうす

煎茶器の一つ。 0.2~0.6lまでの容量のものをいう。一名急焼 (きびしょ) ,茶出し。中国では明時代から用いられ,茗壺,砂壺,泥壺,茶注,茶壺,茗瓶,注春などと称する。急須が日本に渡来したのはで,丹山青海の著『陶器弁解』に足利義政愛用の急須の図 42品を載せているが,確証はない。陶磁器製が多い。

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食器・調理器具がわかる辞典 「急須」の解説

きゅうす【急須】

煎茶や番茶などの日本茶をいれるのに用いる、取っ手と注ぎ口のあるふたつきのうつわ。茶葉を入れて湯を注ぎ、成分がほどよく湯に抽出されたら湯飲み茶碗などに注ぐ。陶磁器が多い。◇古く中国で酒の燗(かん)に用いたうつわを日本で茶に用いるようになったとされる。「急焼(きびしょ)」「茶出し」ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の急須の言及

【煎茶道】より

煎茶とは茶葉を湯で煎じて飲むこと,抹茶(挽茶(ひきちや))以外の日常に飲む茶あるいはその茶葉を総称する場合もある。茶の湯(茶道)に対して,煎茶の煎法,手前,作法を煎茶道という。
【歴史】

[日本人と喫茶]
 〈煎茶〉の文字の,日本における文献上の初見は《日本後紀》の815年(弘仁6)に嵯峨天皇が,近江国唐崎に行幸し,その帰路梵釈寺に立ち寄ったときの記録である。〈大僧都永忠,手自煎茶奉御(手自ら茶を煎じ奉御)……〉と記されている。…

※「急須」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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