急性副鼻腔炎(読み)きゅうせいふくびくうえん(英語表記)Acute sinusitis

六訂版 家庭医学大全科 「急性副鼻腔炎」の解説

急性副鼻腔炎
きゅうせいふくびくうえん
Acute sinusitis
(鼻の病気)

どんな病気か

 ヒトの鼻の構造は、息を吸ったり吐いたりする鼻腔と、鼻腔に隣接する副鼻腔からなっています。鼻腔と副鼻腔は自然口という小さな穴で連絡しています。副鼻腔には、上顎洞(じょうがくどう)(頬の奥)、篩骨洞(しこつどう)(眼の内側)、前頭洞(ぜんとうどう)(眼の上)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)篩骨洞の奥)があり(図6)、これらの副鼻腔に急性炎症が起こることを急性副鼻腔炎といいます。

 かぜに引き続いて細菌感染が副鼻腔に起こり発症します。細菌が副鼻腔で繁殖し、急性の炎症を起こし、結果として副鼻腔内にうみがたまります。

原因は何か

 原因として肺炎球菌、インフルエンザ菌、次いでブドウ球菌などの細菌があげられます。かぜに引き続いて細菌が感染して発症することが多いのですが、潜水や飛行機に乗って副鼻腔の気圧が急激に変化することにより発症する場合(気圧性副鼻腔炎)もあります。外傷が原因で発症する場合もあります。疲労病気で体の抵抗力が低下している時には発症しやすくなります。

症状の現れ方

 症状は、痛みと鼻汁(びじゅう)です。かぜ症状が先行し、続いて膿性の悪臭を伴う鼻汁がみられます。上顎洞に炎症を起こした時には頬部の痛み、篩骨洞に炎症を起こした時には眼の内側の痛み、前頭洞に炎症を起こした時にはおでこの痛み、蝶形骨洞の炎症では頭痛や頭重感が特徴です。

 一般に片側にだけ発症し、発熱は軽微です。まれに副鼻腔の炎症が眼や脳に進むことがあります。眼に及ぶとまぶたがはれたり、視力が落ち、脳に及ぶと強い頭痛や意識障害が起こります。

検査と診断

 診断には、画像検査が大変重要です。副鼻腔の炎症は高度のことが多く、ほとんどの場合、単純X線検査で診断することができます。とくに眼や脳への炎症の進行が疑われる場合には、CTを至急とる必要があります。また炎症の原因である細菌を調べるために鼻汁から細菌の検査をします。似た症状を示すものに歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)副鼻腔真菌症(しんきんしょう)があります。

治療の方法

 鼻のなかにたまった鼻汁を吸引して取り除き、鼻汁から調べた原因菌に有効な抗菌薬と痛みを和らげるために消炎鎮痛薬を投与します。上顎洞に炎症がある場合には、洞内を洗浄する方法が大変有効です。

 疲労がたまっている時に急性副鼻腔炎になりやすいので、抵抗力を上げるために睡眠を多くとることは重要です。そのほか、血管収縮薬で鼻と副鼻腔をつないでいる穴の狭窄(きょうさく)を軽減し、鼻から抗菌薬の吸入を行うことがあります。

病気に気づいたらどうする

 自分でよく鼻をかんで鼻のなかのうみを減らし、睡眠を多くとって体の抵抗力を上げます。鼻汁の量が増えたり、においがひどくなったり、痛みが増すようでしたら、耳鼻咽喉科を受診し、早く治療することが大切です。

関連項目

 鼻漏歯性上顎洞炎副鼻腔真菌症

野中 学


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「急性副鼻腔炎」の解説

きゅうせいふくびくうえん【急性副鼻腔炎 Acute Sinusitis】

[どんな病気か]
 鼻腔(びくう)の周囲には、目と目の間にあってハチの巣のような構造をもつ篩骨洞(しこつどう)、その奥にある蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)、頬(ほお)にある上顎洞(じょうがくどう)、額(ひたい)にある前頭洞(ぜんとうどう)といった、副鼻腔(ふくびくう)と呼ばれる空洞(くうどう)があって、その内側は薄い粘膜(ねんまく)でおおわれています。これらの副鼻腔は、小さな孔(あな)(自然口)で鼻腔とつながっています(図「副鼻腔のいろいろ」)。
 鼻の粘膜はウイルスが感染しやすく、感染すると鼻腔や副鼻腔の粘膜に炎症がおこります。そして細菌が二次感染して、粘膜の炎症はさらにひどくなります。
 鼻腔と副鼻腔をつなぐ孔は小さく、炎症がおこって粘膜が肥厚(ひこう)すると塞(ふさ)がり、膿(うみ)が副鼻腔にたまってきます。この状態が急性副鼻腔炎で、放置すると慢性副鼻腔炎へ移行します。したがって、膿性鼻漏(のうせいびろう)(膿を含んだ黄色から緑色の鼻汁(びじゅう))などが続くときは、早めに耳鼻咽喉科医(じびいんこうかい)を受診しましょう。
[症状]
 鼻閉(びへい)(鼻づまり)、膿性鼻漏、頭痛、発熱、頬の痛み、眼痛(がんつう)などの急性症状が主です。
[原因]
 ブドウ球菌(きゅうきん)、レンサ球菌、インフルエンザ菌、変形菌などが、上顎洞や篩骨洞に感染しておこります。まれに、むし歯の原因菌が感染し、上顎洞に炎症がおこることがあります(歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん))。症状が急性の上顎洞炎と似ていますが、この場合は歯科でのむし歯の治療が重要となります。
[検査と診断]
 X線撮影で副鼻腔に陰影があり、鼻内を観察すると鼻粘膜(びねんまく)がむくんで(浮腫(ふしゅ))赤くなり、中鼻道(ちゅうびどう)に膿汁(のうじゅう)がみられます。これらの検査結果や症状から診断できます。
[治療]
 多くは、抗生物質の使用で軽快します。重症の場合は上顎洞洗浄(じょうがくどうせんじょう)(上顎洞に針を刺して、膿を洗い流す)などの排膿(はいのう)が必要になります。
 炎症が激しいと、近くの目、脳、視神経(ししんけい)に波及し、まれに眼窩蜂巣織炎(がんかほうそうしきえん)、髄膜炎(ずいまくえん)、脳膿瘍(のうのうよう)などの頭蓋内合併症(ずがいないがっぺいしょう)をおこします。この場合、強力な抗生物質の使用と手術による排膿が必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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