心に入る(読み)こころにいる

精選版 日本国語大辞典 「心に入る」の意味・読み・例文・類語

こころ【心】 に 入(い)

[一] (「入る」が自動詞四段活用の場合)
① 心にしみこむ。深く心に留まる。印象が深く感ぜられる。気になる。
万葉(8C後)一二・二九七七「何故か思はずあらむ紐の緒の心爾入(こころニいり)て恋しきものを」
※後拾遺(1086)冬・三九一「山の端は名のみなりけり見る人の心にぞいる冬の夜の月〈大弐三位〉」
② 気に入る。心にかなう。
源氏(1001‐14頃)総角「もの宣へる様などの、なのめならず心に入りて思ひいらるるもはかなし」
③ 気のりがする。興に入る。感興をもよおす。
大和(947‐957頃)一九「心に入らで、あしくなむ詠みたまひける」
④ 専念する。熱中する。身を入れる。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「舞せさせ給ふ。ましてこれはあけくれ心にいりたりければ、になし」
読本春雨物語(1808)捨石丸「心にいりて習へば、一とせ過ぎて、社司『よし』と云ひて出でたたす」
⑤ 理解する。会得する。ふに落ちる。
山家集(12C後)中「易往無人の文の心を。西へ行く月をや余所(よそ)に思ふらん心にいらぬ人のためには」
[二] (「入る」が他動詞下二段活用の場合)
① 心をこめる。熱心にする。深く心に思いこむ。
伊勢物語(10C前)六五「仏の御名御心に入れて、御声はいとたふとくて申し給ふを聞きて、女はいたう泣きけり」
義経記(室町中か)三「一夏の間はいかにもこころに入て勤め、退転なく行ひて居たりける」
② 気に入る。関心をもつ。目をかける。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「仲忠とかいふすきものを心にいれて、夜昼遊び女据ゑて」
③ 心にとめる。気にかける。気をつける。
平中(965頃)三一「ことに、心に入れても思はぬことなれば、言ひさしてものも言ひやらでありければ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「心に入る」の意味・読み・例文・類語

こころ・る

(「入る」が四段活用の場合)
心に深くしみる。
何故なにゆゑか思はずあらむひもの緒の―・りて恋しきものを」〈・二九七七〉
気に入る。心にかなう。
「なのめならず―・りて思ひいらるるもはかなし」〈・総角〉
納得する。よくわかる。
「西へ行く月をやよそに思ふらん―・らぬ人のためには」〈山家集・中〉
(「入る」が下二段活用の場合)
深く心に留める。熱中する。
学問に―・れて、遊びの道にも入りたち給へる時に」〈宇津保藤原の君〉
関心を持つ。親身になる。
「算を―・れて教へけるに」〈今昔・二四・二二〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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