徴士(読み)ちょうし

精選版 日本国語大辞典 「徴士」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐し【徴士】

〘名〙
朝廷または政府に召し出された、学徳のある立派な人。また、召されても朝廷に仕えない者。徴君
※中華若木詩抄(1520頃)下「宋の列祐天下を奪へども、淵明二朝につかへまいと云て、ついに晉の徴士にてはつるぞ」 〔魏志‐王粛伝〕
明治元年一八六八)から同二年までの間、各藩の藩士地方有才の者で朝廷に召し出された者の称。〔第七三‐明治元年(1868)二月三日(法令全書)〕

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デジタル大辞泉 「徴士」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐し【徴士】

朝廷または政府に召し出された高徳の士。特に、明治初年に藩士や地方の有力者の中から召し出されて政府に登用された者の称。

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普及版 字通 「徴士」の読み・字形・画数・意味

【徴士】ちようし

官に召されて応じない人。徴君。〔余叢考、三十六、徴君徴士〕學行るの士にして、詔書召を經(ふ)るも仕へざる士と曰ひ、之れをしては則ち君と曰ふ。~後魏の高允、を作る。~皆、允と同なり。

字通「徴」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「徴士」の意味・わかりやすい解説

徴士
ちょうし

明治維新政府が藩・民間から登用して官吏に任命した者の呼称。徴とは「召し出す」の意。三職制の参与には藩士が任命されていたが、1868年(慶応4)正月17日に7科制が置かれると同時に、徴士、貢士(こうし)の制が新設された。定員はなく、参与に任命されて下の議事所(下議院)の構成員となり、同時に科、局の掛(かかり)を兼ねる行政官でもあった。任期は4年、ただし8年まで延長することができた。貢士の人事権が藩主にあったのに対して、徴士の人事権は朝廷にあり、その職務は徴士のほうが重い。徴士は朝廷ないし中央政府の官吏でありながら、他面、出身藩の藩主の家臣であるという二面性をもっていた。2月11日、徴士は朝臣であるべき旨の命が下ったが、二面性の解消は廃藩置県をまたなければならなかった。政体書に基づく太政官(だじょうかん)制のもとでは、藩士、庶民出身の官吏の呼称となり、翌69年廃止された。

[井上 勲]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「徴士」の意味・わかりやすい解説

徴士
ちょうし

慶応4 (1868) 年1月 17日の三職分科の制によって生れた明治政府初期の議事官。各藩および民間から有才の者が選ばれ,下 (しも) の議事所の議事官として太政官に出仕した。翌2月の改制により参与,各局判事に任命されたが,旧藩出身ということから太政官との間に間隙が生じ,明治2 (69) 年6月 27日廃止。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「徴士」の解説

徴士
ちょうし

明治初年の官吏の職名。1868年(明治元)1月,三職七科の制の制定に際して貢士とともに設置。諸藩士や都鄙の有才の者から公議により選び,参与職に任じ下の議事所の議事官となることとされた。翌月,三職八局の制の制定により下の議事所の議事官は貢士が専任し,徴士は参与職および各局判事に任じられた。69年6月廃止。

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旺文社日本史事典 三訂版 「徴士」の解説

徴士
ちょうし

明治初年の議事官
1868年1月,貢士とともに公議世論を聞くために設置。諸藩士や有能な一般庶民から選んで,参与または議事所の議事官に任命した。任期は4年。同年閏4月の政体書により,政府に登用された官吏の称となり,当初の意味を失い,'69年廃止された。

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世界大百科事典(旧版)内の徴士の言及

【貢士】より

…明治維新期の議事官。1868年(明治1)1月17日三職分課の官制により,諸藩の徴士,貢士らによる下の議事所(公卿,諸侯の会議所は上の議事所)を設けた。徴士は諸藩士および都鄙(とひ)の有才の士から選抜されたもので参与職,分課の掛(のち判事)となったものをいい,貢士は大藩(40万石以上)から3名,中藩(10万石以上)から2名,小藩(10万石未満)から1名ずつ選出されたものをいった。…

※「徴士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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