デジタル大辞泉
「微分」の意味・読み・例文・類語
び‐ぶん【微分】
[名](スル)
1 ある関数の導関数を求めること。
2 ある関数で表される曲線の、ある点における接線の傾き、すなわち変化率を極限値として求めること。その傾きを微分係数といい、関数f(x)の導関数をf′(x)とすると、x=aにおける関数f(x)の微分係数はf′(a)で表される。ここで微分してf′(x)になる関数f(x)を逆の演算として求めることを積分とよび、f(x)はf′(x)の不定積分となる。
[補説]これら微分と積分が互いに逆の演算であるという関係性は微分積分学の基本定理とよばれ、17世紀後半にニュートンとライプニッツによって独立して導かれ、やがて解析学という数学の一大分野に発展した。とくに物理現象の多くは微分方程式によって記述され、それらを解くことによって時間とともに変化する数量を見積もったり、現象を予測したりできる。このように、微分は積分とともに、現代においてさまざまな現象を数学的に記述するための重要な手法となっている。
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び‐ぶん【微分】
〘名〙
① 自分の立場を卑しめていう。低い身分。
※詩序集(1133頃)白雪満庭松詩序〈大江家国〉「籬竹之争二微分一也、纔雖陵二凝寒之気一」
② (━する) 関数の導関数を求めること。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
③ 関数の微小な変化の近似値。関数 f(x) において、x が微小量

x だけ変化したとき、f(x) の導関数 f′(x) と

x の積 f′(x)

x のことを関数 f(x) の微分といい
df(x) と書く。f(x+

x)-f(x) の近似値として用いられる。
※筆まかせ(1884‐92)〈正岡子規〉二「余は一驚を喫したり。何となれば氏の話は数学上の最高等なる部分、微分積分に移りたればなり」
⑤ (━する) ②の比喩として、細かく分析すること。
※無尽灯(1946)〈石川淳〉一「ひとりの女の心情曲線を微分して行くことになるだらう」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
微分
びぶん
differential
関数の変化の様子を表す概念。17世紀,アイザック・ニュートンとゴットフリート・ウィルヘルム・ライプニッツによって導入された。関数 y=f(x)において極限値
が存在するとき,y=f(x)は x=a において微分可能といい,この極限値を f'(a)と表して,x=a における微分係数という。微分係数 f'(a)は,関数 y=f(x)の x=a における局所的な変化率を表す。微分係数を x の関数とみなしたものを f'(x)と表し,導関数と呼ぶ。また,導関数を求めることを微分という。また関数の増分を,
f(x+h)-f(x)=f'(x)h+r(h)
と表すと,
となり,h に対して f'(x)h を対応させる写像は,関数の増分の 1次式による最もよい近似であると考えられる。一般に,微分は関数を局所的に 1次式によって近似する操作である。2変数関数の微分は,
で与えられる。
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微分【びぶん】
関数f(x)に対し,極限値(式1)が存在するとき,f(x)はxで微分可能であるといい,この極限値をxにおけるf(x)の微係数,微分係数,微分商などといい,f′(x)またはdf/dxと書く。微係数を求めることを微分するという。時刻tにおける位置がf(t)ならば微係数f′(t)はtにおける瞬間の速度を表す。また直交座標(x,y)上の曲線y=f(x)に関し,一点(x(/0),y(/0)=f(x(/0)))で引いた曲線への接線の傾きはf′(x(/0))に等しい。→導関数/微分積分学/微分解析機/微分幾何学/微分方程式
→関連項目加速度|極大・極小|差分法|積分|接線|全微分|偏微分
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びぶん【微分 differentiation】
関数y=f(x)の値がxの変化に従ってどのように変わるかを調べようとする。例えば,xがaからbまで変化する間にyはf(b)-f(a)だけ変化し,このyの変化とxの変化との割合は
である。これらの値を調べるだけでも関数f(x)のだいたいのようすはわかるが,もっとくわしくf(x)の状態を知るためには,例えばx=aのときの〈瞬間的変化〉の状態を調べる必要が起こる。この瞬間的な変化の考えを数学的に厳密に定式化すると,すぐ後に説明するところの微分係数,導関数の概念に到達する。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
世界大百科事典内の微分の言及
【条件反射】より
…(4)CS1とCS2がともに条件反射をひき起こすことができるとき,CS1を強化し,CS2を強化しない操作を続けると,CS1によってのみ条件反射が起こるようになる。これを分化differentiationという。(5)分化,消去によってCSとして作用を失った刺激は無効になったのではなく,これを他の有効なCSと組み合わせて与えると,この効果を抑制(制止)する作用をもつ。…
【分化】より
…生物の発生過程において,(1)一つのより単純な系または部分から,二つ以上の性質の異なる系または部分を生ずること,また(2)その直接的,間接的な結果として,新しい特性(分化形質)が発現してくることをいう。
[動物における分化]
個体発生の過程に見られる最も早期のめざましい分化現象は,原腸形成に始まる胚葉分化の過程であるが,さらにこれに続く器官原基の形成期には,(1)の意味における分化が活発に行われる。 脊椎動物の骨格筋の発生を例にとって,その分化の過程を見てみよう。…
【数学記号】より
…計算式3+4=7を表すのにわれわれは数字以外に+,=という記号を使っているが,このような数学記号の使用の歴史は浅い。+,=の使用はそれぞれ15,16世紀までさかのぼるが,最初のうちはおもに代数的な式を表すのに利用され,計算式の中でふつうに使われるようになったのは19世紀である。各時代の人々が必要に応じて数学の記号をくふうしたが,それらのほとんどはすぐに忘れられてしまった。ある記号が一般に定着するのには,皆がその便利さや有効性を認めなければならないので,とくに優劣のないいくつかの記号が考案され,やがてそれら全部が消えてしまうのがふつうであった。…
※「微分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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