御馳走(読み)ごちそう

精選版 日本国語大辞典 「御馳走」の意味・読み・例文・類語

ご‐ちそう【御馳走】

〘名〙 (「ご」は接頭語。「馳走」の尊敬・丁寧語)
① 心を込めたもてなし。また、そのときふるまう酒や料理など。
※虎明本狂言・末広がり(室町末‐近世初)「客人への御ちそうじゃほどに、きゃうへのぼってもとめてこい共云」
※こゝろ(1914)〈夏目漱石〉下「此花が私に対する御馳走(ゴチソウ)に活けられたのだといふ事を知った時」
② うまい飲み物や食べ物。ぜいたくな食事。立派な料理。
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初「手形の『びいる』が一ぽんと、あらはれやした。ところで、しゃアしゃアと御馳走(ゴチソウ)てうだいの間が」
追従(ついしょう)すること。御機嫌とりをすること。
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)五「かたじけなき㒵つき追(つち)で庭はくといふ御地走(ゴチソウ)ふるし、新しき御機嫌取の咄しに夜を明し」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)二「『蛸助に蕎麦を奢らせますやうにまもらせ給へ』〈略〉『これは御馳走(ゴチサウ)でございます。サアサア蕎麦屋へはやく誂て来い』」
⑤ 歌舞伎や寄席などで、所定以外のせりふしぐさを特にやって見せること。また、主役級の役者端役に出たりして観客を喜ばせること。
[語誌](1)江戸時代には、まだ漢語「馳走」の原義(走り回る・周旋の意)が残っていたと思われ、①の用法では、酒や料理の意で用いられることよりも、接待・もてなしの意で用いる方が一般的。
(2)現代語では①②の用法でのみ用いられるが、①の用法としては、もっぱら「ご馳走する」「ご馳走になる」の形で用いられ、形式が固定化している。
(3)江戸時代など、ふるくは「馳走になる」など「馳走」の形で用いられることもあったが、次第に丁寧語形「ご馳走」の方が一般的となった。

ごっつぉう【御馳走】

〘名〙 (「ごっつぉ」とも) 「ごちそう(御馳走)」の変化した語。
※父の婚礼(1915)〈上司小剣〉二「今日はわて一人で御(ゴッ)つぉうの独り占めや」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「御馳走」の意味・読み・例文・類語

ご‐ちそう【御×馳走】

[名](スル)
馳走」を、それをする人や、する相手を敬っていう。また、「馳走」の美化語。心を込めてもてなすこと。特に、食事などをふるまうこと。また、そのもてなし。「ご馳走になる」「すしご馳走する」「冬は火が何よりのご馳走だ」
ぜいたくな料理。豪華な食事。「生まれてはじめてのご馳走だ」
[類語]料理調理割烹かっぽう煮炊き炊事クッキングさいおかずぜん膳部食膳佳肴かこう酒肴しゅこう調味ディッシュ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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