御父様(読み)おとうさん

精選版 日本国語大辞典 「御父様」の意味・読み・例文・類語

お‐とう‐さん【御父様】

〘名〙
① (明治末期以後、それまでの「おとっさん」に代わって広く一般に用いられるようになった語) 父を敬い親しんで呼ぶ語。子供の立場に立っておとなが使う場合もある。
※人情本・貞操園の朝顔(19C中)二「彼方老爺(オトウ)さんや、太三郎さんも心細く、難儀な事で御座いませう」
花柳界で、貸座敷や、置屋、茶室などの男主人を敬って呼ぶ語。おもに芸娼妓が使う。
濹東綺譚(1937)〈永井荷風〉七「『お父(トウ)さん、あした抜かなくちゃいけないって云ふのよ。この歯』と言って、主人の方へ開いた口を向ける」
[語誌]オトトサマ→オトウサマ(またはオトトサン)→オトウサンと変化してできた語。近世後期の江戸語および明治中期までの東京語に用例が見える。第一期国定読本「尋常小学読本」で、父の呼称として採用されたことが契機となり、以後急速に普及し、父の呼称の標準語形となった。→おかあさんおとっつぁん

お‐とっ‐さん【御父様】

〘名〙 (「おととさま」の変化した語) 父を敬い親しんで呼ぶ語。近世後期、中流以上の用語
洒落本・風俗通(1800)三「おめへのおとっさんもとんだやぼなことをいいなはるよのう」
[語誌]→「おとっつぁん(御父━)」の語誌

お‐とと‐さま【御父様】

〘名〙 (「お」は接頭語。「さま」は接尾語) 父を敬って呼ぶ語。江戸時代武家豪商の家の子供が用いたが、末期には下流の者にも広まった。おとうさま。
※浄瑠璃・三日太平記(1767)七「云聞せば得心して、使に行くならお父(トト)様の様に馬に乗(のっ)て行たい」

お‐とう‐さま【御父様】

〘名〙 (「お」は接頭語。「さま」は接尾語。「おととさま」の変化したもの) 父を敬って呼ぶ語。「おとうさん」よりやや改まったいい方。
※新粧之佳人(1886)〈須藤南翠〉一「今日はお父様(トウサマ)と御一所で」

お‐とっ‐さま【御父様】

〘名〙 (「おととさま」の変化した語) 父を敬って呼ぶ語。「おとっさん」よりやや改まったいい方。おとうさま。
※雑俳・柳多留‐一一(1776)「あいおとっさまとかい巻ぐるみ出し」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「御父様」の意味・読み・例文・類語

お‐とう‐さま【御父様】

《「おととさま」の音変化》父を敬って呼ぶ語。「おとうさん」より丁寧な言い方。
[類語]父親男親てててて親お父さんおやじちゃん父じゃ人乃父だいふ阿父あふ慈父パパ

おもう‐さま【父様】

母屋おもやにいる人の意から》父を敬っていう語。宮中・宮家・公家、また、東西本願寺両家などの家庭で用いる。おもうさん。⇔御母様おたあさま
[補説]「御孟様」「御申様」とも書く。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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