御母様(読み)おかあさん

精選版 日本国語大辞典 「御母様」の意味・読み・例文・類語

お‐かあ‐さん【御母様】

〘名〙 (「さん」は「さま」の変化したもの)
① 母を敬い親しんで呼ぶ語。江戸後期中流以上の男女児の用語。明治末期以後、国定教科書により、「おっかさん」に代わって広く一般に用いられるようになる。現在、自分の母親に対する呼びかけの語として最も普通の言い方。子供以外の者が、子供の立場からその母親をさしていうこともある。また、自分の妻を指したり、母親に当たる者が家族内での自称として使うこともある。
※黄表紙・従夫以来記(1784)「かかさんや、とんとんとうがらしをかってくんねえ、おかアさん」
花柳界で、芸娼妓が置屋、茶屋女将(おかみ)を敬って呼ぶ語。おかあはん。〔警察隠語類集(1956)〕
[語誌](1)オカカサマ→オカアサマ(またはオカカサン)→オカアサンと変化してできた語。近世後期の江戸語・上方語ともに用例が見えるが、江戸語ではあまり広くは用いられなかった。上方語では中流以上の男女児の用語として用いられたが〔守貞漫稿‐三〕、特に幕末期の大坂では、庶民にも広く使用されるようになった〔皇都午睡‐三〕。
(2)東京語では、明治中期までは使用例があまり多くないが、二〇世紀初頭頃には、少なくとも良家子女の間では比較的使われるような状況となっていた。一九〇三年の第一期国定読本「尋常小学読本」で、母の呼称として採用されたことが契機となり、以後かなり急速に普及し、母の呼称の標準語形となった。→おっかさんおとうさん

おっか‐さん【御母様】

〘名〙 「おかかさま」の変化した語。
① 母を敬い親しんで呼ぶ語。「おかあさん」が一般化する前に最も広く用いられた呼び方。
※洒落本・意妓口(1789‐1801頃)一「はやくおっかさんのとこへ行きや」
他人の妻や、中年すぎの女性を親しんで呼ぶ語。
※仏国風俗問答(1901)〈池辺義象〉氷すべり「四十五十のお母(ツカ)さんも、我れ劣らじとすべりゆくなり」
[語誌](1)オカカサマ→オッカサマ(またはオカカサン)→オッカサンと変化してできた語。「守貞漫稿」によれば、近世後期江戸の中層町人以上で用いられた。待遇意識や幼児の片言の影響などの無い場合には、オッカサン━中層以上、オッカア・カカサン━下層という分化が大体認められる。
(2)同じく「守貞漫稿」によれば、近世後期上方では、中層町人以上はオカアサン、下層町人はカカサンを使用した。→おかあさんおとっつぁん

おっか‐さま【御母様】

〘名〙 「おかかさま」の変化した語。
① 母を敬って呼ぶ語。「おっかさん」よりやや改まった言い方。おかあさま。
滑稽本浮世床(1813‐23)初「おっかさまのお留守にけがでもさせ申すと」
② 他人の妻を敬って呼ぶ語。
良人自白(1904‐06)〈木下尚江〉後「何でも何処か妻君(オッカサマ)とクッついて小児は生ませるの」

お‐かか‐さん【御母様】

〘名〙 (「さん」は「さま」の変化したもの)
※歌舞伎・近江源氏𨉷講釈(1772)六「粗相(そそう)云うたら、お母(カカ)さんでも利(き)かぬぞ」

お‐かあ‐さま【御母様】

〘名〙 (「お」は接頭語、「さま」は接尾語。「おかかさま」の変化した語) 母を敬って呼ぶ語。江戸末期、上方では中流以上の成人した男子の用語。明治以後は男女ともに用いるが、現在では、多く他人の母をいう上品な言葉として用いられる。〔随筆・守貞漫稿(1837‐53)〕
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「五つになる女の子が『御かあ様、猫も随分ね』といったので」

お‐たあ‐さま【御母様】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「御母様」の意味・読み・例文・類語

お‐かあ‐さま【御母様】

《「おかかさま」の音変化》母を敬って呼ぶ語。「おかあさん」より丁寧な言い方。
[類語]母親女親おんなおやかあさんおっかあお袋母じゃ人母じゃ阿母あぼ慈母じぼママ

おたあ‐さま【母様】

《「対の屋」に住んだところから》母を敬っていう語。宮中・宮家・公家、また、東西本願寺両家などの家庭で用いる。おたたさま。⇔御父様おもうさま

おかか‐さま【母様/×嬶様】

母を敬っていう語。近世、武家や豪商の子弟が用いたが、末期には広く一般的になった。
他人の妻を敬っていう語。多くは子持ちの人妻をいう。
「人の―並みにかづきを着せて出かけ」〈浮・一代男・六〉

おたた‐さま【母様】

おたあさま」に同じ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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