御普請(読み)ごふしん

改訂新版 世界大百科事典 「御普請」の意味・わかりやすい解説

御普請 (ごふしん)

江戸時代,幕府や藩が施工した土木工事。とくに堤川除(かわよけ)・用水・道橋等の普請において,周辺村落が費用を出して行った工事を自普請というのに対し,領主側が費用を負担して行った工事をいう。幕領における河川・用水等の管理は元来代官任務で,1687年(貞享4)の勘定組頭・代官への布達に,灌漑用水普請は高100石に人足50人まで百姓自普請で行うこと,この人数を超えるときには人足扶持を支給すること,堤川除普請は人数の多少にかかわらず扶持米を支給すること,また金銀入用はいずれの普請についても支給すること,竹木・カヤ・わら縄等は支配所内にあればこれを与え,ない所は代金を支給すること等と規定され,橋普請は街道筋の場合,長短に限らず幕府が出費し,在郷の場合は原則として所役とすることとされた。こののち増大した御普請費用は幕府の財政状態の悪化により問題化し,1713年(正徳3)には町人等の請負工事を禁じて,なるべく百姓自普請で行うことを令した。さらに享保期にかけて,御普請所と自普請所を明確化し,また河川・用水を沿岸の諸村が共同で維持・管理する組合結成を促すなど,いわゆる公儀御入用普請の方式が幕府の支出を制限する方向で整備された。実際,御普請所の指定を受けた個所の普請といえども幕府がすべて費用を出したわけではなく,農民がかなりの部分を負担した。例えば1780年(安永9)に行われた品川用水の悪水吐伏樋の伏替御普請では,材木・釘代・マキ皮代や大工・木挽・鳶人足の賃金は幕府が支出し,人足と空俵,それに江戸より御普請場までの材木・鉄物の運賃は組合諸村に課せられている。なお公儀の御普請においては,幕領・私領の別なく国役を徴して行う国役普請や,大名に費用を負担させて行う御手伝普請も実施された。藩の場合も幕府と同じく藩が主導する工事と,村落レベルで行う工事とがあり,例えば鳥取藩では前者を郡(こおり)普請,後者を村普請といった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の御普請の言及

【普請役】より

…大名は幕府から,給人はそれぞれの主君から領知・知行を給与されていること,百姓は土地を所持し,耕作する権利を認められていることによる負担義務の一つ。近世初頭,統一政権が施行した大規模な土木工事において,普請役は石高基準の国役(くにやく)として統一的に賦課されたが(国役普請),幕藩制が確立すると,大名に対する普請役は公儀の御普請御手伝(ごふしんおてつだい)として個別的に賦課されるようになった。御手伝普請の内容も,当初は人足の提供を主とするものであったが,現夫(げんぷ)の徴発が困難となった中期以降しだいに変容し,やがて金納化した。…

※「御普請」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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