御所(読み)ごしょ

精選版 日本国語大辞典 「御所」の意味・読み・例文・類語

ご‐しょ【御所】

〘名〙
① 天皇の御座所。禁中。内裏。皇居。また、天皇を敬っていう語。
※令義解(718)職員「大内記二人。〈掌詔勑。凡御所記録事〉」
上皇、三后、皇子の住居。また、それらの人を敬っていう語。
※大鏡(12C前)六「小松のみかどの、親王にておはしましし時の御所は」
③ 親王、将軍、大臣などの住居。また、それらの人を敬っていう語。
※吾妻鏡‐文治元年(1185)四月二一日「景時為御所近士
④ 将軍、大臣以上の公卿、またはその妻子を敬っていう語。隠居した人を大御所幼年の者を小御所などといった。
※年中定例記(1525頃)「赤金にてうちたる鉢に入候て、日に三鉢づつ両御所様へ参候
⑤ 江戸時代、内親王の住持した寺院や、これに準じた宮・公卿の娘の入寺した尼寺。比丘尼御所。
太政官布告‐明治四年(1871)六月一七日「今般御改正に付仁和寺大覚寺等を始め御所号、門跡号、院家、院室等の名称悉皆被廃止
※浮世草子・日本永代蔵(1688)一「御所(ごショ)の百色染」
浄瑠璃傾城酒呑童子(1718)一「だんもやうの染かづき、供の女がほうかぶり、御所のひんぬき」
咄本・私可多咄(1671)一「じゅくしとは御所にかぎらず、しぶがきにても、よくうみたるを」

ごせ【御所】

奈良県中西部、金剛山地東麓の地名奈良盆地の南西隅に位置し、古くは大和政権政治の中心地、大陸渡来人の居住地。江戸時代初期は桑山氏の城下町大和絣、大和売薬で知られた。古墳史跡が多く、葛城神社、本修験宗総本山吉祥草(きっしょうそう)寺がある。JR和歌山線、近鉄御所線が通じる。昭和三三年(一九五八)市制。

お‐ところ【御所】

〘名〙 (「お」は接頭語) 相手を敬って、その住所をいう語。

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デジタル大辞泉 「御所」の意味・読み・例文・類語

ご‐しょ【御所】

天皇の御座所。禁中。内裏。また、天皇を敬っていう語。「京都御所
「―も二位殿抱き参らせて」〈弁内侍日記
上皇三后皇子の住居。また、それらの人を敬っていう語。「仙洞せんとう御所」「東宮御所
親王将軍大臣などの住居。また、それらの人を敬っていう語。
「―(=大塔宮)の落ちさせ給ふものなりと心得て」〈太平記・七〉
[類語]皇居宮城宮中内裏宮廷禁中禁裏畏き辺り王城大内山雲上雲の上九重ここのえ行宮あんぐう

ごせ【御所】

奈良県西部の市。江戸初期には桑山氏の城下町。大和絣やまとがすりの伝統を継ぐ繊維工業、大和売薬を母体とする製薬業が盛ん。吉野くず御所柿ごしょがきが特産。人口3.0万(2010)。

お‐ところ【御所/処】

相手を敬ってその住所・住居をいう語。お住まい

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改訂新版 世界大百科事典 「御所」の意味・わかりやすい解説

御所[市] (ごせ)

奈良県中西部の市。西は大阪府と接する。1958年御所町と葛上,葛,大正の3村が合体,市制。人口3万0287(2010)。金剛山地の東麓に位置し,山麓を葛城川が北流する。南東部は竜門山地の西端にあたり,曾我川が北に流れ,北部は奈良盆地へとひらけている。葛城・曾我両川は天井川で,しばしば洪水を起こしたが,吉野川分水の実現(1963年ころから受水)により水利事情は緩和された。市の中心は葛城川に臨む旧御所町で,江戸時代初期に桑山氏の城下町となって発達した。江戸時代以来の大和木綿の伝統をつぐメリヤスや靴下などの繊維製品,履物,万年筆,化学製品などの生産が多い。また近世以来大和売薬の中心地として富山と並ぶ売薬の町であり,御所柿(ごしよがき)の名で知られる柿の産地でもある。この地域は古代豪族の葛城氏や鴨(賀茂)氏の本拠地で,宮山古墳をはじめとする史跡も多い。金剛山地の最高峰金剛山は四季登山客でにぎわい,その北の葛城山はツツジが美しい。いずれも金剛生駒国定公園に含まれる。JR和歌山線,近鉄御所線,吉野線が通じる。
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普及版 字通 「御所」の読み・字形・画数・意味

【御所】ぎよしよ・ごしよ

ご座所。宋・黄庭堅〔公択(李常)の棟芽の詠を作れるに奉同す〕詩 想ひ得たり、天香に隨ひ 春の閣、輕雷を轉ずるを

字通「御」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「御所」の解説

御所
ごしょ

天皇・太上天皇・三后・皇太子などの居所。またその部屋・殿舎・邸宅をもさす。ただし長屋王邸跡出土の木簡には内親王御所・竹野王子御所・安倍大刀自御所などの用字がみえ,一般には貴人の居所の意で用いられたことがわかる。平安後期から貴族の日記に摂政・関白・大臣に用いた例がみられるようになり,中世になると将軍の居所も称した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御所」の意味・わかりやすい解説

御所
ごしょ

(1) 天皇の座所,禁中,内裏の称。また天皇の敬称。 (2) 上皇,三后,親王,将軍,大臣などの居所をもさし,またそれらの人々をも称した。 (3) 現在では,東京の大宮,東宮各御所,京都の京都,京都大宮,仙洞各御所をさす。

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世界大百科事典(旧版)内の御所の言及

【京都御所】より

…1337年(延元2∥建武4),北朝の光明天皇のとき里内裏の土御門東洞院殿(つちみかどひがしのとういんどの)を皇居と定めたことに始まる。1869年(明治2)東京奠都(てんと)まで歴代天皇の内裏として同じ位置にあったが,御所敷地の規模は後世の再建・造替のたびに拡張された。室町時代には1401年(応永8)と43年(嘉吉2)に焼失し再建されており,1569年(永禄12)より織田信長が大修理を実施し,91年(天正19)に豊臣秀吉が新殿に造替した。…

【皇居】より

…天皇の住居。古くは宮,宮室,内裏,禁裏,禁中,禁闕,内,御所などのほか,大宮,大内,九重,百敷(ももしき)などの美称もあり,〈皇居〉の語も平安時代には記録に見える。東京遷都に際し,江戸城を東京城と改称,ついで皇城と公称したが,明治宮殿完成後は宮城を公称と定めた。…

※「御所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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