御影供(読み)みえいく

精選版 日本国語大辞典 「御影供」の意味・読み・例文・類語

みえい‐く【御影供】

(「みえいぐ」とも) 〘名〙
真言宗で、毎年三月二一日の宗祖弘法大師の忌日に、その画像を供養する法会。《季・春》
東宝記(1352)六「御影供 三月廿一日」
日蓮宗で、毎年一〇月一三日の宗祖日蓮の忌日に、その画像を供養する法会。御命講御影講
咄本醒睡笑(1628)七「かくて十月十三日、御影供に諸檀那みなあつまれる座敷へ彼をよび出し」
柿本人麻呂の画像をまつり、物を供えて、和歌を講ずる会。人麻呂影供
※とはずがたり(14C前)五「この御影を供養して御影供といふ事をとりおこなふ」

みえ‐く【御影供】

〘名〙 (「みえぐ」とも) =みえいく(御影供)
浮世草子好色万金丹(1694)二「けふより三月廿一日の御影供(ミヱク)まで、二文字屋にござる筈」

お‐めいく【御影供】

〘名〙 (「お」は接頭語) =おめいこう(御命講)

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デジタル大辞泉 「御影供」の意味・読み・例文・類語

みえい‐く【御影供】

神仏故人絵像を祭って供養すること。
真言宗で、空海の忌日の3月21日に、その絵像を供養する法会。みえく。 春》「―や人に埋もるる壬生朱雀/太祇
御会式おえしき
柿本人麻呂の絵像を祭って和歌を講じる会。人麻呂影供。

お‐めいく【影供】

御会式おえしき」に同じ。

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改訂新版 世界大百科事典 「御影供」の意味・わかりやすい解説

御影供 (みえく)

〈みえいく〉ともいう。真言宗の開祖弘法大師空海は835年(承和2)3月21日に入定(にゆうじよう)した。この入定の日に勤修する法会を御影供といい,毎年(旧暦)修される正御影供(しようみえく)と月ごとの月並(つきなみ)御影供がある。御影供は弘法大師入定信仰に由来する。入定信仰の成立は延喜年間(901-923)以前と考えられるが,入定信仰の成立によって御影供と〈お衣替え〉の行事が始められた。御影供は910年(延喜10)に東寺で始められたといわれるが,信仰的行事は高野山が中心で,高野山の御影供は1057年(天喜5)明算(1021-1106)が始修したといわれる。旧の正御影供には,伽藍の御影堂の外陣(げじん)の戸が開けられ,新任の法師が,内々陣の真如親王筆になるという弘法大師寿像(生身の御影)の前で法要を勤める。このように御影供は弘法大師がまだ生きて衆生(しゆじよう)を済度しているという入定信仰に支えられたもので,高野山の奥院で毎日生身供(しようじんぐ)が供えられるのも同一の信仰による。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御影供」の意味・わかりやすい解説

御影供
みえいく

「みえく」ともいう。広い意味では像の掛軸をかけて供養する法会(ほうえ)をいうが、普通は真言(しんごん)宗の宗祖弘法大師(こうぼうだいし)(空海)の御影を奉安してその報恩謝徳のために修する法会のこと。毎月21日に修するのを単に御影供といい、弘法大師の御入定日(ごにゅうじょうび)である3月21日に修するものをとくに正(しょう)御影供とよぶ。910年(延喜10)、東寺の観賢(かんけん)が東寺灌頂(かんじょう)院で修したのがその初めとされている。

[加藤精一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御影供」の意味・わかりやすい解説

御影供
みえく

仏教儀式名。「みえいく」とも読む。祖師の命日に,その図像 (御影) を掲げて供養する法会 (ほうえ) 。代表的なものに真言宗祖弘法大師御影供があり,毎月 21日に行う法会を「月並御影供」,3月 21日の法会を「正 (しょう) 御影供」という。天台宗には天台大師・伝教大師・慈覚大師・慈恵大師・智証大師の五大師御影供がある。なお,宗派により同種の行事を報恩講,あるいは会式 (えしき) ,御忌会 (ぎょきえ) などと称する。

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世界大百科事典(旧版)内の御影供の言及

【御影供】より

…真言宗の開祖弘法大師空海は835年(承和2)3月21日に入定(にゆうじよう)した。この入定の日に勤修する法会を御影供といい,毎年(旧暦)修される正御影供(しようみえく)と月ごとの月並(つきなみ)御影供がある。御影供は弘法大師入定信仰に由来する。…

【御会式】より

…日蓮宗の各寺において,日蓮の忌日(10月13日)に営まれる,宗祖報恩のための法会をいう。御影供(みえいく),御影講(みえいこう)ともいうが,とくに〈御命講(おめいこう)〉(大御影供がなまってオメイクとなる)と称して,弘法大師忌の御影供と区別している。日蓮入寂の地である東京都大田区池上の本門寺と,杉並区堀ノ内の妙法寺の御会式はもっとも盛んである。…

【祖師忌】より

…和国の教主といわれる聖徳太子の忌日(2月22日。現行では法隆寺が3月22~24日,四天王寺は5月22日)の法要は聖霊会(しようりようえ)とよび,真言宗の開祖空海の忌日(3月21日)には御影供(みえく)が営まれる。浄土宗開祖法然の場合(1月25日。…

※「御影供」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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