御室(読み)オムロ

デジタル大辞泉 「御室」の意味・読み・例文・類語

おむろ【御室】

京都市右京区の地名仁和寺にんなじがある。
仁和寺異称。また、その住職門跡宇多天皇仁和寺内に一室を設けて隠棲いんせいし、御室御所と称したことからいう。

み‐むろ【御室】

貴人の住まい。おむろ。
「しひて―にまうでて拝み奉るに」〈伊勢・八三〉
御諸みもろ」に同じ。
神奈備かむなびの―の岸やくづるらむ竜田たつたの川の水のにごれる」〈拾遺・物名〉

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精選版 日本国語大辞典 「御室」の意味・読み・例文・類語

お‐むろ【御室】

[1] 〘名〙 (「お」は接頭語)
① 「むろ(室)」をいう尊敬・丁寧語。
今昔(1120頃か)四「聖人(しゃうにん)の御室の内に盗人の可取き物不見えず」
② 仁和寺の門跡(もんぜき)御室門跡
たまきはる(1219)「御むろのまゐらせ給る」
[2]
[一] (宇多天皇が建て、退位後、寺内に閑室をもうけて隠棲し、「御室」と称されたところから) 京都市右京区御室にある仁和寺の異称。御室御所
※大和(947‐957頃)御巫本附載「仁和の御内召してけり。『御むろに植ゑさせ給はんに、おもしろき菊たてまつれ』」
[二] 仁和寺周辺の地。現在は、京都市右京区東部の地名。
浮世草子好色五人女(1686)三「御室北野の案内しるよししていそげば」

み‐むろ【御室】

〘名〙 (「み」は接頭語)
住居を尊んでいう語。庵、僧房などについてもいう。おむろ。
出雲風土記(733)大原「御室山〈略〉神須佐乃乎命、御室(みむろ)を造ら令め給ひて、宿らせたまひき。故、御室といふ」
神楽歌(9C後)採物・榊「〈本〉榊葉に 木綿取り垂(し)でて 誰が世にか 神の御室(みむろ)と 斎ひそめけむ」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御室」の意味・わかりやすい解説

御室
おむろ

京都市右京区の一地区。京福電鉄北野線が通じ、御室仁和(にんな)寺駅がある。仁和年間(885~889)宇多(うだ)天皇が創建した真言宗御室派総本山の仁和寺があり、天皇はのちにここに隠栖(いんせい)し、御室御所とよんだのが地名のおこりである。仁和寺は1467年(応仁1)応仁(おうにん)の乱の兵火を受けたが、徳川家光(いえみつ)によって再興され、金堂(こんどう)は御所の紫宸殿(ししんでん)を移建した国宝建造物。そのほか多くの文化財があり、世界文化遺産にも登録されている。境内にはサトザクラ200余株(しゅ)があり、八重咲きで丈が低く、「御室桜」の名で知られ国指定名勝となっている。

[織田武雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御室」の意味・わかりやすい解説

御室
おむろ

京都市右京区の一地区。市街地北西部,仁和 (にんな) 寺を中心とする地区で,北は大内山から南は双ヶ岡 (ならびがおか) にいたる。地名は,宇多天皇が譲位ののち仁和寺に御座所を設け,それが御室と呼ばれたことに由来。仁和寺は国宝の金堂など貴重な文化財が多く,遅咲きのサクラは「御室」と小丘陵群の双ヶ岡 (ならびがおか) などの名勝で名高い。

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世界大百科事典(旧版)内の御室の言及

【仁和寺】より

…京都市右京区の双ヶ丘(ならびがおか)の北にある真言宗御室(おむろ)派の総本山。大内山と号し,仁和寺門跡,御室御所ともいう。…

※「御室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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