後面(読み)うしろめん

精選版 日本国語大辞典 「後面」の意味・読み・例文・類語

うしろ‐めん【後面】

〘名〙
歌舞伎舞踊の一つ。後頭部にも面を付け、身体前後それぞれ別の役に演じ分ける趣向。享保一七年(一七三二)に佐渡島長五郎が「釣狐」を所作事化したときにはじまるという。
咄本・百福茶大年咄(1789)とし忘れ「なんぞおどりをみたか〈略〉はじめが、どうせうじ、それから、うしろめん」
② ①に用いる長唄、または浄瑠璃の俗称。
※雑俳・柳多留‐六九(1817)「かた法華内でひかせぬうしろ面

こう‐めん【後面】

〘名〙
① うしろがわ。後部後方
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉五「羅馬(ローマ)人の語に曰く、機会は〈機会を生きたる人と做して言なり〉顙(ひたひ)に毛ありて、その後面は禿せり」 〔楊万里‐舟過桐廬詩〕
② のちの面会
※貴理師端往来(1568頃)「猶期後面之時候」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「後面」の意味・読み・例文・類語

こう‐めん【後面】

うしろの面。うしろがわ。後方。
[類語]後ろ後方しりえ背後後部直後

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「後面」の意味・わかりやすい解説

後面 (うしろめん)

歌舞伎舞踊の一技法および,その技法を用いた舞踊曲の略称演者が後頭部に面をつけ,一人で二役を踊り分けること。古くから多く演じられてきたのは,狂言《釣狐》に想を得て白蔵主と狐を踊り分ける趣向で,佐渡嶋長五郎が家の芸としていたものである。これを受けついだ代表作が,1762年(宝暦12)4月江戸市村座で2世瀬川菊之丞が踊った四変化《柳雛諸鳥囀(やなぎにひなしよちようのさえずり)》の一つで,曲は長唄。その後,夜鷹と折助,粂仙人と雷・天人などいくつかの変り種ができた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「後面」の意味・わかりやすい解説

後面【うしろめん】

日本舞踊。後頭部にも面をつけ,前後で別な人物が踊っているように見せかける技巧。享保ころ大坂の佐渡島長五郎が狂言の〈釣狐〉を所作化して白蔵主(はくぞうす)と狐で踊ったのがはじめ。曲としては《後面》(柳雛諸鳥囀(やなぎにひなしょちょうのさえずり))と《粂の仙人》(後面萩玉川)がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「後面」の解説

後面
(通称)
うしろめん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
旅柳二面鏡 など
初演
明和6.3(江戸・市村座)

後面
うしろめん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
享保2.冬(大坂・沢村長十郎座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

普及版 字通 「後面」の読み・字形・画数・意味

【後面】こうめん

背面。

字通「後」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android