精選版 日本国語大辞典 「彼方此方」の意味・読み・例文・類語
あち‐こち【彼方此方】
[1] 〘代名〙 他称。いろいろの方向または地点をさし示す。また、所々方々、あれこれ、いろいろ、などの意で副詞的にも用いる。あちらこちら。あっちこっち。
※宇治拾遺(1221頃)三「牛の、あちこちありき困(こう)じたるに」
※古今集遠鏡(1793)三「こちの心がサ、花といっしょにあちこちとちっていくやうな心もちがする」
[2] 〘形動〙 逆になっているさま。あべこべ。反対。あちらこちら。あっちこっち。
※随筆・蘐園雑話(1751‐72頃)「親が子を引合すべきに、子にて親を引合すはあちこちなり」
あちら‐こちら【彼方此方】
[1] 〘代名〙 =あちこち(彼方此方)(一)
[2] 〘形動〙 =あちこち(彼方此方)(二)
あっち‐こっち【彼方此方】
(「あちこち」の変化した語)
[1] 〘代名〙 =あちこち(彼方此方)(一)
※洒落本・通仁枕言葉(1781)「あっちこっちへ云ひやって、仕めへにゃァつかみ合」
[2] 〘形動〙 =あちこち(彼方此方)(二)
かなた‐こなた【彼方此方】
〘代名〙 他称。いろいろの方向、または地点をさし示す。あれこれ、いろいろなどの意で副詞的にも用いる。あちらこちら。あちこち。処々方々。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「七夕祭、かなたこなたとせさせ給へり」
※太平記(14C後)三二「継母の讒に依て、那辺這辺(カナタコナタ)漂泊し給つるが」
あっちら‐こっちら【彼方此方】
(「あちらこちら(彼方此方)」の変化した語)
[1] 〘代名〙 =あちこち(彼方此方)(一)
[2] 〘形動〙 =あちこち(彼方此方)(二)
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「『おめへの傍(そば)へ倚(よ)ると色かぶれがしてこまらア』『ヘン、きつい洒落さ。そりゃア、あっちらこっちらだよ』」
あなた‐こなた【彼方此方】
〘代名〙 他称。あちらこちら。ほうぼう。
※宇津保(970‐999頃)春日詣「宮よりはじめ奉りて、女みこたち、あまたの北の方、あなたこなたあはせてここの所」
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