彼奴(読み)あいつ

精選版 日本国語大辞典 「彼奴」の意味・読み・例文・類語

あ‐いつ【彼奴】

〘代名〙 (「あやつ」の変化したもの。話題人物をののしったり、遠慮なく言ったりする場合、または乱暴な話し方事物を指す場合に用いる) 他称。話し手、聞き手両者から離れた人、事物などを指し示す(遠称)。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)陳勝項籍第一「をくひゃうものてをるあいつは」
日葡辞書(1603‐04)「Aitçu(アイツ)、または、aitçume(アイツメ)。アイツメガ。〈訳〉あの男。軽蔑卑下を伴って言う」
何処へ(1908)〈正宗白鳥〉七「さうか、彼女(アイツ)此頃は浮れ歩いてやがる」

か‐やつ【彼奴】

〘代名〙 他称。話し手、相手以外の者をいやしめていう語。ののしり表現に用いる。きゃつ。
※枕(10C終)二二六「ほととぎす、おれ、かやつよ。おれ鳴きてこそ、我は田植うれ」
[補注]平安時代俗語として用いられているが、これが音変化した「きゃつ」は中世以降使用され、特に近世用例が多い。

あ‐やつ【彼奴】

〘代名〙 他称。第三者をののしっていう。あいつ。きゃつ。
十訓抄(1252)一「あやつとらへよと、みすの内よりいひ出だし給ひたりければ」

か‐いつ【彼奴】

〘代名〙 他称。あいつ。かやつ。卑しめていう語。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)「なんとしてか、かいつがたのしうなりつらうそ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「彼奴」の意味・読み・例文・類語

あ‐いつ【奴】

[代]《「あやつ」の音変化》
三人称人代名詞。第三者を軽蔑けいべつして、または親しみの気持ちを込めてぞんざいに言う語。あのやつ。やつ。「彼奴はそういう奴だ」
遠称の指示代名詞遠くのもの、または話し手・聞き手がすでに知っているものをさして、ややぞんざいに言う語。あれ。「彼奴をとってくれ」
[類語]そいつ彼氏彼女此奴こやつこいつ其奴そやつ彼奴かやつきゃつやつやっこさんこの方この人その方その人あの方彼方あちらあの人

きゃつ【奴】

[代]《「かやつ」の音変化》三人称の人代名詞。主として男子をののしったり親しみをこめたりしていう語。あいつ。やつ。「これは彼奴仕業だな」
[類語]彼氏彼女此奴こやつこいつ其奴そやつそいつ彼奴かやつあいつやつやっこさんこの方この人その方その人あの方彼方あちらあの人

か‐やつ【奴】

[代]三人称の人代名詞。ののしっていう語。きゃつ。あいつ。
「―が方の者ども(=敵方ノ兵)いと多く死にけるは」〈大鏡道隆
[類語]彼氏彼女此奴こやつこいつ其奴そやつそいつきゃつあいつやつやっこさんこの方この人その方その人あの方彼方あちらあの人

あ‐やつ【奴】

[代]三人称の人代名詞。ののしったり、あなどったりするときのやや古めかしい言い方。あいつ。きゃつ。「彼奴にできる訳がない」

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