役料(読み)やくりょう

精選版 日本国語大辞典 「役料」の意味・読み・例文・類語

やく‐りょう ‥レウ【役料】

〘名〙
江戸時代、役職についた武士に給せられた俸祿幕府では、寛文五年(一六六五)に始まり、原則として米で支給され、切米(きりまい)同様、春・夏・冬の三季に分けて与えられた。若年寄五千俵、大目付千俵、目付五百俵など。役俸。
※禁令考‐前集・第二・巻一八・寛文六年(1666)七月二一日「今日出仕之面々一同御前江被召出、何も御役料被下」
江戸名主(なぬし)俸給町人の負担した町入用から支払われ、名主の所轄する町数・町の広狭などによりその額は異なった。
③ 一般に、役目に対する報酬
※妙好人伝(1842‐52)二「火消の役を勤しが〈略〉所由もなく退役せんと申さるは察するに大方役料(ヤクレウ)を増てほしき所存ならん」

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デジタル大辞泉 「役料」の意味・読み・例文・類語

やく‐りょう〔‐レウ〕【役料】

役目に対する報酬。
江戸幕府が、役付きの者へ、その役職に対する手当てとして支給した給与

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改訂新版 世界大百科事典 「役料」の意味・わかりやすい解説

役料 (やくりょう)

江戸幕府が幕臣に支給した役職手当の一種。武士の勤役は本来,領知知行を給与されていることに対する義務として行われるべきもので,幕府役人の場合もはじめは特別な手当を給されることはなかったが,勤役中出費がかさみ,困窮する者が少なくなかったため,1665年(寛文5)から翌年にかけ,役職に応じ一定の役料(例えば大番頭,留守居(るすい)に2000俵など)が支給されることになった。その後82年(天和2)在職者に役料の分を加増し,役料支給をいったん停止したが,89年(元禄2)より一部の役職就任者に再び役料を給するようになり,92年各役職の基準石高を定め,持高がこれに及ばない場合に一定の役料を与えることとした。この制度が発展して1723年(享保8)に足高(たしだか)制が制定されたが,遠国(おんごく)役人などには足高に加えて役料も支給された。なお役料は切米(きりまい)と同じく春,夏,冬の3季に米金で給与された。1867年(慶応3)に至り,布衣(ほい)以上の役人の足高,役料,役知役扶持(やくふち)などを廃し代りに役金を給した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「役料」の意味・わかりやすい解説

役料
やくりょう

江戸幕府の役俸。幕臣の経済的な負担を少なくし、人材の登用を容易にするため一定の役職者に在職中に限り家禄(かろく)とは別に支給した。1666年(寛文6)に初めて行われ、約40の役職に対して家禄の多少にかかわらず一定額が支給された。1682年(天和2)に廃止され、受給者は家禄に加増された。ついで、1689年(元禄2)から92年にかけてふたたび復活、経費を節減するために各役職ごとに基準家禄を設け、それに達しない者に対して支給した。たとえば、町奉行(ぶぎょう)は家禄3000石以下の者に700俵が支給されている。その後、この制度は1723年(享保8)に足高(たしだか)制の制定によりふたたび改革され、足高と併用されるようになった。

[佐々悦久]

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百科事典マイペディア 「役料」の意味・わかりやすい解説

役料【やくりょう】

江戸幕府が幕臣に対して支給した役職に対する役俸。原則として蔵米で与えられた。京都所司代等遠国役人中の重職は役知(知行所)を受けたが,役料が一般的で享保年間(1716年―1736年)京都町奉行,大坂町奉行で600石,日光奉行は500俵等。若年寄以上には支給されなかった。→遠国奉行
→関連項目足高

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「役料」の解説

役料
やくりょう

江戸時代,幕府が特定の役職の者に支給した役俸の一つ。1665年(寛文5)にはじめて大番頭2000俵などと役料を定め,翌年には大目付・町奉行各1000俵ならびに旗奉行・作事奉行・勘定奉行各700俵などを制定した。82年(天和2)に一時廃止,92年(元禄5)復活。原則として年3回,米で支給された。しかし,しだいに幕府財政を圧迫したので,1723年(享保8)に足高(たしだか)の制が始まった。

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世界大百科事典(旧版)内の役料の言及

【扶持】より

…また大奥女中などは,退職後も在職中の功により扶持を続けて受ける場合もあった。(3)旗本が駿河加番,大坂船手(ふなて)役などの役に就くと,分限高に応じて扶持米が支給されるが,これは役料の一種であり,役扶持,手当扶持と呼ぶこともある。(4)陣屋に赴く江戸詰めの代官や将軍の日光社参に従う従者に対して,江戸出立から帰府までの期間支給される扶持は,出張手当の一種である。…

※「役料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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