当麻(読み)たえま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「当麻」の意味・わかりやすい解説

当麻
たえま

能の曲目。五番目物。五流現行曲。世阿弥(ぜあみ)作。奈良・當麻(たいま)寺の曼陀羅(まんだら)伝説に取材した能。念仏の僧(ワキ、ワキツレ)が當麻寺に参詣(さんけい)する。老尼(前シテ)が侍女(ツレ)を先だてて登場し、阿弥陀仏(あみだぶつ)を賛美したのち、僧に向かって、中将姫がここに籠(こも)って生身の阿弥陀仏を拝んだ奇跡、また仏の力添えで蓮(はす)の糸で曼陀羅を完成した話をし、自分たちがその阿弥陀如来(にょらい)と観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)の化身と告げて消える。僧の祈りのなかに、中将姫の精魂(せいこん)(後シテ)が極楽の歌舞の菩薩の姿で現れ、美しく澄みきった舞を舞い、仏教を賛嘆して終わる。気品と霊気の表現に優れた特徴があり、老女物に準じて扱われ、至難の能である。宗教的雰囲気がそのまま舞台に形象化、音楽化された卓越した例である。

増田正造

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精選版 日本国語大辞典 「当麻」の意味・読み・例文・類語

たえま【当麻】

[一] =たいま(当麻)(一)(一)
[二] 謡曲。五番目物。各流。世阿彌作。念仏僧大和当麻寺を訪れると、老尼と若い女が来て、昔中将姫が生身(しょうじん)阿彌陀如来を拝みたいと祈ると、彌陀が化尼(けに)・化女(けにょ)となって現われたことを語り、自分たちがその化尼・化女だとあかして消える。その夜、僧の夢の中に中将姫が現われ、仏法の徳をたたえて舞を舞う。

たいま【当麻】

[1]
[一] 奈良県葛城(かつらぎ)市の地名。古代の当麻郷の地。初瀬(はせ)街道の道筋宿屋茶屋が多くにぎわった。当麻寺があることで知られる。〔二十巻本和名抄(934頃)〕
[二] =たえま(当麻)(二)
[2] 〘名〙 「たいまもの(当麻物)」の略。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「当麻」の意味・わかりやすい解説

当麻
たいま

神奈川県北西部,相模原市南東部,相模川左岸の地区鎌倉時代一遍弟子真教が開いた無量光寺の門前町として発達し,戦国時代以後は八王子街道の人馬継ぎ立ての宿場となった。河岸にはナシ園が広がる。

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デジタル大辞泉 「当麻」の意味・読み・例文・類語

たえま【当麻】

謡曲。五番目物世阿弥作。念仏僧が大和の当麻たいまを参詣すると、阿弥陀の化身の老尼と観世音の化身の侍女が現れて中将姫の話を語り、その夜、僧の夢に中将姫が現れ、仏法の徳をたたえて舞をまう。

たいま【当麻】

奈良県北西部、葛城かつらぎ市の地名。二上山にじょうさんのふもとにある。

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