当選人(読み)とうせんにん

改訂新版 世界大百科事典 「当選人」の意味・わかりやすい解説

当選人 (とうせんにん)

一般に,選挙によって当選者としての地位を得たものをいう。公職選挙法では選挙区選出と比例区選出では当選人としての地位の取得方法は異なる。同法によると,衆議院(小選挙区選出)議員参議院(選挙区選出)議員の選挙,地方公共団体の議会議員・長の選挙において有効投票の最多数を得たものを当選人と呼んでいる。ただし,当選人となるには法定数最低限得票法定得票数)が必要である(公職選挙法95条)。当選人が定まったときは,選挙長は,ただちに当選人の住所氏名および得票数などを選挙管理委員会に報告しなければならない(101条)。もし立候補の締切期限までに議員候補者の数が定員を超えないとき,または長の選挙で候補者が1人のときは投票は行わずに無投票当選として,選挙長は当該選挙の各投票管理者に通知し,あわせて告示し,かつ当該選挙管理委員会に報告しなければならない。この場合,選挙長は,選挙期日から5日以内に選挙会を開き,当該公職の候補者を当選人に決定しなければならない(100条6項)。

 選挙会による当選人の決定がなされたのち,当選の効力に関する異議申立て,訴願および訴訟が提起され,その結果,当選人の決定に誤りがあると認められ再選挙を行わなくても当選人を定めることができる場合は,ただちに選挙会を開き,本来の当選人たるべき当選人を定めなければならない。これを当選人の更生決定という(96条)。

 また,当選人が確定したのち,(1)当選人が死亡者であるとき,(2)当選人が選挙の期日後に被選挙権を有しなくなったため当選を失ったとき,(3)当選人で議員,長と兼職禁止の職にある者がその兼職禁止の職を辞さないとき,さらに(4)地方公共団体の議会の議員または長の当選人が請負などをやめないとき(97条1項)は,ただちに選挙会を開き当選人を決定しなければならない。これを繰上補充と呼んでいるが,その補充は選挙の期日から3ヵ月以内に限定されている(97条2項)。

 衆議院比例代表選出議員および参議院比例代表選出議員の選挙における当選人の決定は,ドント方式と呼ばれる方法によって名簿届出政党等の当選人を決定している。すなわち,各名簿届出政党等の得票数を1,2,3,……の整数で順次除して得たすべての商を,その最大のものから順次,その選挙において選挙すべき議員の数に相当する数になるまで数え,数えあげられた商の個数をもって,それぞれの名簿届出政党等の当選人の数とする(95条の2)。そして,この各名簿届出政党等の名簿登載者のうち,あらかじめ定められた当選人となるべき順位に従い,当該名簿届出政党等の当選人の数に相当する数の名簿登載者が当選人となる(95条の2)。なお,衆議院比例代表選出議員は全国を11のブロックに分けて人口比例により配分され,200人の当選人が選出されている。また,参議院比例代表選出議員については全国を1ブロックとして100人の当選人が選出されている。

 これら比例代表選出議員の選挙において当選人の繰上補充が生じたときは,当該当選人に係る名簿の名簿登載者で当選人とならなかった者がいるか否かを確認し,もし,当選人とならなかった者がいるときは,ただちに選挙会を開いて,その者の中から名簿に定める当選人となるべき順位に従い,当選人を定めなければならない(97条の2)。衆・参議院比例代表の選挙において当選人が定まったときは,選挙長は,名簿届出政党等に係る得票数,当選人の数,当選人の住所および氏名等を中央選挙管理会に報告しなければならない(101条の2-1項,4項)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「当選人」の意味・わかりやすい解説

当選人
とうせんにん

公職選挙法上の概念で、選挙の結果に従い各種の議員あるいは地方公共団体の長となる者をいう。比例代表選出の参議院議員選挙については、ドント式計算法によって各政党の当選人数を求め、あらかじめ用意された「名簿」の順に当選人を決めるが、それ以外の選挙においては、有効投票の最多数を得た者で、法定得票数に達している者を当選人とする(公職選挙法95条1項・95条の2)。得票数が同じ者については、選挙長がくじで当選人を定める(同法95条2項・95条の2第2項)。候補者が定数を超えないため投票を行わないときは、選挙会においてその候補者が当選人に定められる(無投票当選=同法100条1、3項)。当選人が死亡していたり兼職禁止の職を辞さないときには繰上げ当選が認められる(同法97条・97条の2)。当選の効力は、当選人の告示日に発生し、議員または長の資格を得る。なお、当選人がいないとき、または当選人が議員定数に達しないときは、選挙長が選挙管理委員会に報告したうえで再選挙を行う(同法109条・110条)。

[佐々木髙雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「当選人」の意味・わかりやすい解説

当選人
とうせんにん

一般的には,選挙によって選ばれる公務員について選挙会で当選人と決定された者をいう。特に中央,地方の議会の議員についていう。日本では,公職選挙法第 10章を「当選人」にあてて詳細な規定をおいている。同法 95条によれば,参議院の比例代表選出議員の選挙以外の各選挙においては,「有効投票の最多数を得た者をもって当選人」としている。ただし各種の当選人となるには,同条に規定された (法定の) 最低限の獲得投票数がなくてはならない。これに対し参議院比例代表選出議員の選挙では,名簿届出政党などの得票数に比例して当選人が配分・決定される (95条の2) 。無投票の場合は,当該選挙の候補者が当選人となる (100条) 。当選の効力は選挙管理委員会による当選人の住所,氏名の告示のあった日から生じる (101,102条) 。

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