弾正台(読み)だんじょうだい

精選版 日本国語大辞典 「弾正台」の意味・読み・例文・類語

だんじょう‐だい ダンジャウ‥【弾正台】

〘名〙 (「だんしょうたい」「だんじょうたい」とも)
① 令制で、内外の非法をといただし、風俗を粛正することをつかさどる役所。尹(かみ・いん)・弼(すけ・ひつ)・忠(じょう・ちゅう)・疏(さかん・そ)の四等官と、巡察弾正などの官人がある。親王および左右大臣以下の朝臣非違を、弾奏式により太政官を経ず直ちに奏聞し得たが、後世、その職掌検非違使(けびいし)に移り、実体を失った。ただすつかさ。霜台。〔令義解(718)〕
② 明治二年(一八六九)五月に設置された太政官制度下の官庁の一つ。刑部省とともに司法省前身で、非違を糾弾(きゅうだん)することをつかさどった。尹・弼・忠・疏・巡察弾正(巡察使部)、史生などの職員があった。同四年七月廃止。

ただす‐つかさ【弾正台】

〘名〙 (「糺(ただ)す司(つかさ)」の意) =だんじょうだい(弾正台)①〔二十巻本和名抄(934頃)〕

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デジタル大辞泉 「弾正台」の意味・読み・例文・類語

だんじょう‐だい〔ダンジヤウ‐〕【弾正台】

律令制で、非違の取り締まり、風俗の粛正などをつかさどった役所。検非違使けびいしが置かれてからは形骸化した。ただすつかさ。
明治2年(1869)太政官制下に設置された警察機関。同4年、司法省合併

ただす‐つかさ【弾台】

だんじょうだい(弾正台)1

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改訂新版 世界大百科事典 「弾正台」の意味・わかりやすい解説

弾正台 (だんじょうだい)

(1)和訓は〈ただすのつかさ〉。古代の令制官司の一つ。二官八省のいわゆる政府機関から独立して,太政大臣を除く全官人の綱紀の粛正と非法違法の摘発とを任務とした。唐の御史台にならったもので,天武朝に令制の弾正尹にあたる糺職大夫がみえ,このころからこの種の役所が存在したと考えられる。一応全国の官人を対象とする形をとっていたが,京以外の諸国の官人を対象とするのは,京に逗留中に犯した非違または諸国の官人に非違ありとして告訴された場合に限られていた。弾正台の官人の職名はその職掌がらか他の官司の通例と異なり,尹(いん),大弼(だいひつ),少弼,大忠(だいちゆう),少忠,大疏(だいしよ),少疏などと重々しく音で読まれた。尹はのちには多く親王が任じられた。810年代に主として京の治安維持にあたる検非違使(けびいし)が設置されると,弾正台はしだいにその職務をこれに奪われて形骸化していった。
弾例
執筆者:(2)明治初年の警察。律令制下の弾正台の名称を復活させたもので,1869年(明治2)5月22日刑法官の監察司に代わって設置された。長官は尹,次官は弼と律令制と同じ名称を用い,各地の巡察と非違の糾弾を任務とし,新政府に背反する旧幕府の残徒および政治的陰謀者の偵察を職務とした。同年7月8日刑法官が廃され刑部省が設けられると同省に属し,京都に西京出張所を設け,8月には東京本台が三河以東,西京出張所が尾張以西を所管することとした。70年には大阪にも出張所を置いた。71年7月廃止され,司法省にひきつがれた。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「弾正台」の意味・わかりやすい解説

弾正台
だんじょうだい

令(りょう)制の警察機関。風俗の粛正と非違の取締りにあたる。和名では「ただすつかさ」と読み、唐名は御史台(ぎょしだい)という。唐の御史台には台院、殿院、察院の三院が属しているが、わが国の弾正台は主として台院の職務を模したものである。その職員は四等官(しとうかん)制で、長官(かみ)に尹(いん)1人があり、のちには多く親王の任となる。次官(すけ)の弼(ひつ)はもと1人であるが、やがて大弼、少弼に分かれる。判官(じょう)は大忠(だいちゅう)1人、少忠1人、主典(さかん)は大疏(だいそ)1人、少疏1人で、その下に現在の巡査に相当する巡察弾正10人や史生(ししょう)6人、使部(つかいべ)30人、直丁(じきちょう)2人などが所属する。弘仁(こうにん)年間(810~824)に検非違使(けびいし)が置かれてからは、弾正台の職務はしだいに吸収された。

 1869年(明治2)刑法官監察司にかわり設置され、長官(尹)に九条道孝、次官(大弼)に池田茂政(前岡山藩主)が任命された。71年廃止。

[渡辺直彦]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「弾正台」の解説

弾正台
だんじょうだい

1「ただすつかさ」とも。律令制下の官司の一つ。違法行為を糾弾する特別検察機関。養老職員令の規定によれば尹・弼・忠・疏の四等官と巡察弾正10人,および史生・使部・直丁から構成される。職務は内外を巡察して非違を糾弾することだが,京内の摘発が中心で,諸国は訴訟があった際に受理して推問するだけであった。律令法上は,各行政官司が検察・裁判権を有し,弾正台はそれらが看過したものを糾弾する役割であった。規定上は民間の習俗の粛正も職掌とされていたが,実情は不明。二官八省から独立しており,その糾弾は奏弾式の書式で直接天皇に奏上することとなっていた。

21869年(明治2)5月22日に刑法官監察司にかわって設置された機関。名称は律令制下の弾正台からとられた。行政監察と刑事司法の機能を有し,刑部省の死刑断案について干渉する権限をもち,横井小楠(しょうなん)・大村益次郎の暗殺については犯人の処刑に反対するなど,守旧派の姿勢を示した。このため刑部省をはじめとする関係官庁との衝突も多く,権限をしだいに削減されて71年の司法省設置により廃止された。

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百科事典マイペディア 「弾正台」の意味・わかりやすい解説

弾正台【だんじょうだい】

律令制官庁の一つ。二官八省(にかんはっしょう)から独立し,官吏の検察を担当。唐にならって設置されたが,行政・検察一体の日本にはなじまず,格の高いわりに実績がなく,その活動も京の内に限られるようになった。平安初め検非違使(けびいし)に権限をとられ,名目的存在となる。1869年―1871年に明治初年の警察として復活された。
→関連項目司法省

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弾正台」の意味・わかりやすい解説

弾正台
だんじょうだい

律令官制の一つで警察機関。内外の非違を糾弾し,風俗を粛正することを職掌とした。長官の尹 (かみ) は従三位相当官で,親王が任じられることが多く,高位高官の非違をも,直接奏聞する権限をもっていた。尹の下に弼 (すけ) ,忠 (じょう) ,疏 (さかん) ,巡察弾正などがあった。9世紀の検非違使設置後は有名無実化した。明治維新後一時復活をみたが,明治4 (1871) 年司法省が設置されて廃止された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「弾正台」の解説

弾正台
だんじょうだい

①律令官制の警察機関
②明治時代の警察機関
八省から独立して,風俗の粛正・官人の違法糾弾を任務とする。全国の治安維持にあたるのが原則であったが,京内に限られるようになった。9世紀に検非違使 (けびいし) が設けられると有名無実となった。
1869年に設置したが '71年廃止された。

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世界大百科事典(旧版)内の弾正台の言及

【弾正台】より

…一応全国の官人を対象とする形をとっていたが,京以外の諸国の官人を対象とするのは,京に逗留中に犯した非違または諸国の官人に非違ありとして告訴された場合に限られていた。弾正台の官人の職名はその職掌がらか他の官司の通例と異なり,尹(いん),大弼(だいひつ),少弼,大忠(だいちゆう),少忠,大疏(だいしよ),少疏などと重々しく音で読まれた。尹はのちには多く親王が任じられた。…

【御史大夫】より

…尚書省の六部尚書,門下省の侍中,中書省の中書令がいずれも正三品であるのとほぼ対等の位階をもち,百官の非違を糾弾する職責に任じた。御史台は日本の律令では弾正台となり,中国でも明・清時代には都察院という名称に変わった。【滋賀 秀三】
[日本]
 天智天皇の時代には大臣の次に置かれた官職名。…

【奏】より

…密奏は奏状を密封して奏する場合もある。律令制では太政官(だいじようかん),弾正台および地方国司から奏する定めで,その文書様式を公式令で規定している。太政官からの場合,論奏式,奏事式,便奏式の3型がある。…

※「弾正台」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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