弾丸(読み)だんがん(英語表記)bullet

翻訳|bullet

精選版 日本国語大辞典 「弾丸」の意味・読み・例文・類語

だん‐がん ‥グヮン【弾丸】

〘名〙
① 古代中国で、弾弓(だんぐう)のたま。はじき弓のたま。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐66)魏田韓第三「黄金を以て弾丸をしたものぞ」 〔説苑‐正練〕
② (「たんがん」とも) 銃砲につめて発射するたま。銃弾、砲弾などの総称。
※山陽詩鈔(1833)四・前兵児謡「北客能来何以酬、弾丸硝薬是膳羞」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉五「戸棚の口から弾丸の如く飛び出した者が」
③ 非常に小さい地域のたとえ。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉七「日本は弾丸(ダングヮン)小国にあらずや」 〔庾信‐哀江南賦〕
④ 銃弾・砲弾の飛ぶように速度の非常に速いもののたとえ。
※スポーツ讚(1949)〈佐々木基一〉「ヴァインズは手も出ないほど強力な弾丸ボールを打込むかと思うと」

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デジタル大辞泉 「弾丸」の意味・読み・例文・類語

だん‐がん〔‐グワン〕【弾丸】

銃弾砲弾の総称。
鉄砲のたまのように速いことのたとえ。「弾丸ライナー」
古代中国で、小鳥などを捕らえるために、はじき弓につけて飛ばしたたま。はじきだま。
[類語]銃弾鉄砲玉砲弾砲丸散弾実弾凶弾流れ弾

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「弾丸」の意味・わかりやすい解説

弾丸
だんがん
bullet

銃砲によって発射され、その貫徹力または内部に充填(じゅうてん)された炸薬(さくやく)の爆発による爆風と破片によって殺傷・破壊効果を発揮する物体。炸薬のほか、焼夷(しょうい)・発煙・化学剤などを充填した特殊弾もあり、その用途に応じて使用される。

[小橋良夫]

歴史

中国で火薬が発明された宋(そう)代の1000年ごろ、火毬(かきゅう)、煙毬(えんきゅう)、毒薬煙毬などの破裂弾、焼夷弾、毒ガス弾などが考案され、人力による手投げまたは投石機によって発射された。1274年(文永11)に博多(はかた)湾に来襲した蒙古(もうこ)軍が使用した「てつはう(鉄炮(てっぽう))」は、鉄の容器に火薬を詰めた破裂弾で、投石機によって発射されたものである。弾丸の発射が筒形火器によって行われるようになったのは1300年代の明(みん)初期になってからで、初めは丸い石を発射したが、のち球形の鉄または鉛の実弾(すだま)(単一の弾丸)となり、小火器類では鉛弾、火砲類では粗鉄製の弾丸が一般的となった。もちろん実弾なので爆発力はなく、衝撃力だけで目標を破壊するものであった。当時の特殊弾としては、半球形の実弾2個や、鉄棒を鎖で連結した連鎖弾や連桿(れんかん)弾、ぶどう弾などが海戦で使われた。

 15世紀後半、現代の榴弾(りゅうだん)の原型ともいうべき弾丸内に火薬を詰めた臼砲(きゅうほう)用の中空弾グレナードがドイツで発明された。発射と同時に導火線点火され、グレナード内の火薬に伝火爆発するものであった。現代のような長形尖頭(せんとう)弾が使用されたのは、1826年にフランス人デルブイーニュによって施条(せじょう)(ライフル)砲が発明され、発射された弾丸に旋転を与えることにより、空気の抵抗を減らし安定した弾道が得られるようになってからである。その後、砲腔(ほうこう)の施条に弾丸を密着させるため圧搾式、拡張式などのくふうが行われ、1857年ドイツで弾丸の外周に銅などの軟らかい金属帯を巻き付けて施条にかみ合わせる後装砲が考案され、英仏でもこれに倣って軍に採用したので、火砲は急速に滑腔砲から尖頭弾使用の後装施条砲へと進歩を遂げた。

 一方、炸薬としての火薬は、硫黄(いおう)・硝石・木炭を混合した黒色火薬が長い間使用されたが、1846年シェーンバインの綿火薬、1847年イタリアのソブレロニトログリセリン、1866年ノーベルのダイナマイト、1884年ビエイユの無煙火薬、そして1886年フランスのチュルパンのピクリン酸などの発明が、化学工業の進歩により、次から次へと開発実用化され、1945年アメリカで開発された原子核爆弾も1952年に小型化されて火砲弾となり現在に至っている。

 小銃用の弾丸は長い間、球形の鉛弾が一般的であったが、1846年にフランス人ミニエーによって拡張式の椎実(しいのみ)型弾丸が発明されて、前装(先込め)式ライフル銃に使用され、まもなく開発された薬莢(やっきょう)の実用化によって小銃は後装式となり、弾丸も機関銃など自動銃の発明で、用途により各種の弾丸がつくられている。

[小橋良夫]

種類

大別して火砲用の砲弾と、機関銃・小銃用の銃弾とがある。砲弾は目的によって榴弾(通常の殺傷・破壊用)、徹甲弾、対戦車弾、発煙弾照明弾、焼夷弾、徹甲榴弾(艦船の装甲を貫徹して内部で爆発するもの)、ガス弾、細菌弾、核弾頭をつけた原子核砲弾などがある。銃弾には通常弾、徹甲弾、曳光(えいこう)弾、焼夷弾、炸裂弾、狭窄(きょうさく)弾(約20メートルの近距離の射撃練習弾で、装薬量も少なく弾丸も軽量小型)およびダムダム弾ともよばれる弾頭部の被甲(ジャケット)の頂点を切り欠き鉛の弾芯(だんしん)(コア)を露出させた狩猟弾、狩猟用の散弾などがある。

[小橋良夫]

構造

銃弾は通常、重い硬鉛の芯をある程度硬い白銅鋼で包んだもので、命中したときの衝撃力によって殺傷破壊力を発揮させるものであり、曳光・焼夷弾など特殊弾以外は弾丸内部に火薬その他を入れないのが普通である。形状は尖頭形で、つねに頭部を前にして所定の弾道を飛行させるため、銃弾外側の白銅鋼の被甲が銃腔内の旋回する施条に完全に食い込むように設計される。したがって銃口口径より弾丸直径のほうがやや大きくなっているのが普通である。曳光弾は、弾丸後部に黄燐(おうりん)や赤燐などを基剤にした発火発煙剤を入れ、弾丸が銃口を離れたのち、昼は煙、夜間は発光で弾道を目視できるようにしたもので、曳光剤は発射時に着火する。

 砲弾の基本的構造は、弾体、炸薬、信管、弾帯から構成される。弾体は、衝撃力の増大すなわち断面単位重量の増加、存速(弾道上任意の点における弾丸の速度)の増加、弾道性能の向上、貫徹力の増大などのため長紡錘形となり、通常、鋳鋼でつくられるが、目的に応じて多少形状、材質を異にする。炸薬は爆発効果を直接期待するもの、爆発による弾体破片の飛散衝撃に期待するものなどにより種類・容量などを異にするが、通常は溶かした高性能のピクリン酸系統の火薬を弾体に流し込み、固形化されたものが充填されている。信管は弾頭部または弾底部につけられ、命中したときの衝撃によって作動して伝火薬に点火し炸薬を爆発させる。砲弾の目的により、命中と同時に瞬間的に作動する着発信管、または多少の時間をおいてから作動する時限信管が一般的だが、第二次世界大戦中、対空用として英米で共同開発されたVT(バリアブル・タイム)信管は、近接信管ともよばれ、弾丸から発する電波の反射効果によって、命中しなくとも目標近くで作動し弾丸を炸裂させ飛行目標を破壊する。弾帯は銃弾の被甲同様、砲弾に自旋運動を与えるため、砲腔内の施条に食い込ませ、あわせてガス漏れを防止させるもので、砲弾下部外側に巻かれた銅製の環である。

 砲弾のなかでもっとも多く使用される榴弾(HE high explosive)は、殺傷・破壊を目的とするため、弾体は比較的薄く炸薬量が多い。徹甲弾(AP armour piercing)は艦船・戦車などの装甲を貫徹したのち、内部で炸裂するもので、弾体は厚く、弾頭部に硬い金属を用い、炸薬量は比較的少ない。旧日本海軍が開発した九一式徹甲弾は、弾道性能が優れ、また水中に突入すると弾頭部が分離して平頭弾となり弾丸は直進するので、水面下でも敵艦船に損害を与えることができた。最近とくに発達が著しい対戦車砲弾には、炸薬の頭部を逆円錐(えんすい)形にへこませて成型し、炸裂時に発生する超高熱ビームによるモンロー効果によって装甲板を焼き抜く高性能成型(せいけい)榴弾(HEAT high explosive anti-tank)、高硬度のタングステン鋼製の細い徹甲弾の周囲に、発射後砲口外で飛散する送弾板(サボ)を巻いた砲口径より小さい超高速弾の送弾板付徹甲弾(APDS armour piercing discarding sabot)、大量の粘着性炸薬を充填し、貫徹はしないが装甲の表面でつぶれながら炸裂し、ブラスター効果によって鋼板の裏側を剥離(はくり)散乱させて車内の人員を殺傷する粘着榴弾(HESH high explosive squash head)などがある。焼夷弾は炸薬のかわりにテルミット・エレクトロン合金などの焼夷剤を入れたもので、目標に命中した瞬間に高温で炸裂する。ガス弾も炸薬のかわりに催涙・くしゃみ・嘔吐(おうと)性などの化学ガス剤を充填し、破裂によって毒ガスを放散させる。照明弾は照明剤を吊(つ)ったパラシュートが内蔵してあり、発射後、時限信管によって一定時間後空中に放出され発光しながらパラシュート降下する。発煙弾は、着地と同時に点火発煙するものと、空中で炸裂し点火された発煙剤を飛散させるものとがある。原子弾は核物質と起爆装置とにより核爆発効果をねらったもので、初期には原子核砲弾が開発されたが、現在では爆発力制限・放射線強力化を目的に中性子弾頭が開発され、米陸軍および海兵隊に203ミリ砲から105ミリ榴弾砲用が配備されている。

[小橋良夫]

装薬

弾丸を発射するために銃・砲身の基部にある薬室で爆燃させる火薬は、装薬または発射薬とよばれる。装薬は炸薬に比べて燃焼速度はやや遅く、無煙性のものが用いられる。

 弾丸と結合した薬莢に装薬を入れた固定式、弾丸と薬莢を分離した半固定式、装薬をいくつかの絹の袋に入れ、必要に応じて装薬量を加減する分離式とがあり、銃および中小口径砲は固定式、大口径砲は半固定式または分離式が採用されている。装薬には燃焼速度の斉一が要求されるため、銃用は小粒状、火砲用は細長い平板状または中心に穴があけられた管状につくられ、瞬間的に伝火するようになっている。薬莢底部には雷管があり、分離式の場合は火砲の閉鎖機に装着される火管(点火装置)と伝火薬によって発火される。

 砲弾の重量は、口径7センチ級で1発当り5~7キロ、15センチ級で40~60キロ、30センチ級で400~500キロ、戦艦ニュー・ジャージー級主力艦の主砲40センチ級では800~1200キロ、旧日本海軍の戦艦大和(やまと)の46センチ砲は1460キロに達していた。

[小橋良夫]

『Ian V. Hogg:The Illustrated Encyclopedia of Ammunition (1985, Chartwell Books, Inc., New Jersey)』


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百科事典マイペディア 「弾丸」の意味・わかりやすい解説

弾丸【だんがん】

銃砲から射出される銃弾砲弾。実体弾と,中に爆薬をつめ信管で爆発させる中空弾がある。砲弾はすべて後者で,これには徹甲弾榴(りゆう)弾榴散弾照明弾などがある。→ダムダム弾猟銃
→関連項目大砲

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普及版 字通 「弾丸」の読み・字形・画数・意味

【弾丸】だんがん(ぐわん)

はじき玉。〔塩鉄論、塩鉄取下〕昔鞅の秦に任ぜらるるや、人を刑することを刈るが(ごと)く、師を用ふること彈丸のし。

字通「弾」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の弾丸の言及

【弾薬】より

…いずれも火薬の力で発射され,人員の殺傷,車両や艦艇や資・器材の破壊,航空機の撃墜などに用いる。小火器弾薬は,拳銃,小銃,機関銃,散弾銃などに用いられ,通常,弾丸,発射薬,雷管付き黄銅製の薬莢(やつきよう)で一体化されている(図1)。実戦用としては,普通弾,徹甲弾,焼夷弾,曳光弾(えいこうだん),およびこれらを組み合わせた弾薬(たとえば曳光徹甲焼夷弾)があり,訓練用には,空包,擬製弾,狭窄弾(きようさくだん)などがある。…

※「弾丸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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